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愛媛国縁起
おもしろきことも無き世をおもしろく・・
『愛媛国縁起』
【乃麻埜(のおの) 『媛国攻陣始末記』を物語りて・・・】
一方、神武(かみたけ)は勝利の美酒を味わいつつ、本陣近くの山に逃げ込んだという敵の事など気にもしていない。
まったく別の事を考えていた。恐るべき思案であった。
彼は今、美酒に酔いつつ待っている。邪馬台国の都を陥落させる時を、である。
神武にとって今日の一戦は、その前哨戦に過ぎず、しかも想いのほか楽に、かつ早く決着してしまったらしい。そのため余った時を大野営で潰し、兵の慰労も兼ねて祝宴を張った。
二年ばかり前、彼が仕掛けた戦は邪馬台国の軍容を知るための、いわば模擬戦だった事は、すでに述べた通りである。その結果、想うていたよりも強い、と判断したらしい。
その後の二年を自軍の充実のみに費やしたのではなかった。
出雲から海に漕ぎ出し、邪馬台国の東方に在る津称奈(つとな)国へと使者を送っていたのである。目的は〈戦時同盟〉であった。
「貴国は老舗にて強大なれば新興の邪馬台国など、あるいは敵とも思うておらぬやも知れませぬ。が、ちと面白き事のない存在ではありませぬか」
と慇懃(いんぎん)に切り出し・・
「弊国としては今より以上に東征するつもりはござりませぬが、ただ一つの望みと申せば貴国との国交にて、貴国の伝統ある文物を学ばせていただきたい、その一心であります」
とへりくだり、続けて
「されば貴国との間に壁ともなる邪馬台国、弊国の全力を傾け滅しとうござります。滅した後には畿内全土を貴国への献上物として差し上げたい、と決めて一度は挑みましたれど敵は存外に強く、恥ずかしながら敗北を喫しましてござります。今は再度の戦を仕掛けるべく軍備を整えております。きたる決戦の折ふし【ちょうどその時】には、貴国からも兵を出していただき、敵の東西より挟撃すべく御力添えのほど願い奉りまする」
と云った。
なかなか巧緻なる口上なら、いっそ、見事なる外交、と誉めていい。二度ばかりは、すげなく断られ、それでも諦めず、やっと三度めに同盟を成している。

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