2009年01月31日

三国志をふくむ、邪馬台国との事情あれこれ・・、ややこしいわね。そんなことないさ、ゆっくり、じっくり読んでみてね。分かったわ。

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愛媛国縁起

平和呆けの国
         四
 ともかく渦目(うずめ)の死の直後、卑弥呼(ひみこ)は公孫淵(こうそんえん)に対して遣わした使者に、自分を美弥(みね)国女王と云わしめているのである。
無論、黒幕はあくまでも嘉汰耶(かたや)であった。

 中国内陸では青竜二年、呉(ご)と蜀(しょく)は二方面から同時に大国魏(ぎ)を攻めた。蜀の丞相は、かの有名な諸葛孔明(しょかつこうめい)であり、彼は五丈原に陣を張った。
 この時、呉のおかげで燕王になった公孫淵は呉の孫権に対してあいまいな態度をとり、表面上は大国である魏に追随したかたちで、結局は呉に加担せず、兵を挙げなかった。
 公孫淵は、これで魏が自分を燕王として承認し、燕を完全独立国とみなしてくれるものと考えていた。
公孫淵は自身の才量で魏と呉を手玉にとっているつもりだったのかも知れないが、魏・呉ともに、ただその地理的条件を考慮していたに過ぎず、魏は公孫淵に対して大司馬・楽浪公という爵位を与えたのみであった。諸葛孔明の死によって西域の脅威が滅した魏にとって、もはや朝鮮半島に対する地理的軍事価値がなくなってしまったのである。すなわち、公孫淵などには興味もない。

 公孫淵には、それが分からなかったらしい。
この魏の恩賞に対して露骨に不満感を表した彼は、おおやけに燕王を呼称し、燕を独立国家としてふるまい始めたのである。
 魏としては、これを放っておくわけにはゆかず、かの諸葛孔明をも倒した司馬仲達(しばちゅうたつ)に四万の兵をあたえて、一気に公孫淵を討ち滅ぼしてしまった。この間の事情は、嘉汰耶には知るすべもない。結果として公孫淵が殺され、燕が滅亡した事が分かっただけである。

 ただ、嘉汰耶はしたたかであった。
すかさず司馬仲達に対して、難升米(なしめ)という男を長とする卑弥呼の使者を遣わせ、莫大な貢物を捧げて魏との国交を願い出た。司馬仲達は、この卑弥呼の使者をおおいに利用した。
 当時の魏王朝内で、司馬仲達の好敵手といえば大将軍・曹爽(そうそう)であった。曹爽の父である曹真(そうしん)は、曹操の養子である。曹真は文武両道において傑物であり、太祖の養子などという立場など歯牙にもかけず常に最前線で戦い、数え切れない武功を誇っている。

 司馬仲達と曹真は、魏の国政を補佐する双璧であったが、曹爽には父親ほどの実力はない。つまり親の威光によって大将軍にのぼっただけの事であったが、結果的には朝廷内において父子二代にわたる絶対的地位を確保した事に違いない。

 後輩に先を越されてしまった司馬仲達は、卑弥呼を大国の女王に仕立て上げる事にしたのである。
というのも、古来より中国では、その王朝の天子の威光を知らしめるため外国の朝貢を望み、その外国とは、より大国で、より遠方であるほどに朝廷に喜ばれ、重んじられた、という事情による。
「美弥国ではまずい。倭国を統一しつつある大国として、邪馬台国と名乗れ」
 司馬仲達は嘉汰耶の使者に云い、難升米は独断で受けた。
目的はあくまでも魏との実質的な国交であり、我国の名はどうでもよい、と考えたのである。
 司馬仲達は、海を隔てた東方の文明文化ともに著しく劣った蛮国を大国と偽り、魏朝廷に朝貢させ、朝廷は大いに喜悦し、女王卑弥呼に対して勅書と金印〈親魏倭王〉を授けた。こうして司馬仲達は、その仲介人である自らの地位を向上させた。
 その副産物として女王卑弥呼の名が『魏志倭人伝』に刻まれる事となったわけである。
 また、こうした事情で邪馬台国は小国の連合体である、と記されたのだった。

(卑弥呼が金印を受け取ったのは、これより二年後の事であり、その時初めて自分が女王として治める国名が邪馬台国であると知った・・、ともいう。)

【この時期は、倭国にとっては最大の危機でもあった。当然の事だが、倭国とは大陸から現在の日本を見た時の総称であり、この当時、倭という統一国家はない。】

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 10:11 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

2009年01月30日

三国志も、チラッとカスる日本古代史なんだぜ!!きゃあ!!その頃の物語なのね!!そうそう、しっかり楽しんでねっ!!

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愛媛国縁起

平和呆けの国
       三
 暫し、略筆が続く。この部分が『愛媛国縁起』の序章部分であり、原本の痛みが著しい数十頁なのである。
読解不能な箇所は、前後の文字から推察して記した・・。

 愛姫の祖母である美弥毘(みやび)は、本州の西端辺りに位置した美弥(みね)という国で産まれた。
その生母は、渦目(うずめ)という。渦目は美弥国最高の巫女であったらしい。当時は神寄の際に、武勇に優れた不特定の男と交わるのが習慣であったため、美弥毘の父親の名は分からない。
 邪馬台国の女王として名高い卑弥呼(ひみこ)は同じ美弥国で美弥毘よりも二年先に産まれている。
美弥毘とは幼なじみとして育っているが、卑弥呼の方は父母ともに姓名不詳である。
 これは、卑弥呼の母親が巫女ではなかった事を意味するであろう。ただ、卑弥呼は生まれながらに異常な霊力を宿していたらしく、美弥毘が産まれた同年、いずれは美弥毘のお側衆筆頭になるべく、渦目のお側衆である袈卑という名の巫女に引き取られており、美弥毘と同じ御霊屋で姉妹のように育てられた。

 父が特定できないとはいえ、美弥毘は巫女として純血であり、やはり生まれながらに神が宿っている。
その霊力たるや、言葉を喋り出す頃から存分に発揮され、近郷の村人の冠婚葬祭の吉凶などを占って、ことごとく的中させたという。
 一方、卑弥呼は巫女の血筋ではないが、その生命に宿す霊力は、あるいは美弥毘よりすぐれているかも知れない。何と、卑弥呼わずか七歳にして渦目直属のお側衆として重用され始めているのである。しかも、渦目自らの抜擢であった。
 ともあれ、渦目の膝元で美弥毘と卑弥呼は、その天性ともいえる霊力をさらに高め、互いに競い合うかのようにして研ぎ澄ましていった事には違いない。

 天性といえば、それは巫女の霊力に限るものではない。
武勇にも、やはり血筋といったものがあり、それが何代か続いて純化されると不世出の天才として結晶するものらしい。
 渦目と常に交わる者の中に、嘉汰耶(かたや)という男がいる。
この地方が美弥国としてまとまる前から、彼の先祖代々、その時々最高の巫女と床を重ね続け、武略でもって美弥建国に貢献した、いわゆる武門の名流といっていい家系に生まれた。

(かの都祢那賀(つねなが)の、祖父になる男である。)

 当時は、美弥国{七千余戸}ばかりでなく対海国{つまのくに=千戸余}、一大国{いきのくに=三千戸余}、末廬国{まつらのくに=四千余戸}、伊都国{いとのくに=千余戸}、奴国{なのくに=二万余戸}、不弥国{ふみのくに=千余戸}、投馬国{とまのくに=五万余戸}など大小様々な国が割拠しており、その近隣における覇権を争ってせめぎ合っていた。

 嘉汰耶の父はイガリ(射狩か)といい、その名を地方一帯にとどろかせる弓の達者であった、という。彼は一党を率いて他国の領地を切り取り、平時は猪などを狩って暮らしたらしい。
 その実子である嘉汰耶が、父を凌ぐ軍事力に渦目の霊力を重ねて、西方へと領土を拡大していった。
内海から大陸への接点を求めたのである。
 やがて瀬戸内海西域を制圧し、赤馬関【あかまがせき=現在の下関】を手中に収め、嘉汰耶は朝鮮半島との交易に積極的に着手した。

 この当時、中国大陸は後漢末期の群雄割拠時代、世にいう三国志の幕が上がりつつあった時期で、朝鮮半島を伐り獲ったのは公孫度(こうそんど=後漢における遼東郡太守・武威将軍)であった。
 しかし、公孫度は半島を完全攻略した年に他界し、その嫡子である公孫康(こうそんこう)が跡を継いだ。
 嘉汰耶は公孫康に使者を送り、莫大な貢物で懐柔した。嘉汰耶自らが占領した小国を丸ごとすり潰したほどの貢物であり、父の跡を継いだばかりの公孫康は殊更に喜悦し、美弥国に対して交易の門を開いたのだ、というのである。

(当時の貢物といえば主に真珠と翡翠、それに生口と呼ばれる奴隷達である。)

 ただし、である。それほどの力を誇りながら、嘉汰耶は王ではない。美弥国の民や他の勇士達も嘉汰耶を王にと望んだが、彼がまだ若すぎるという理由よりも、渦目を頂とする巫女達の卦が幾度占っても大凶と出たため許さなかったのである。
 王として認められない嘉汰耶は、むしろそれを奇貨とし、表面上は美弥国に尽くすという態度をとりながら、かげでは主に武器を輸入する事につとめ、大陸の製鉄技術やその加工技術を一族の俊英達に学ばせつつ力を蓄えていった、とある。
 また一方で、彼は十二歳になったばかりの卑弥呼と通じ、その強力な呪力を秘密裏に私化して、幼い卑弥呼に女王の地位をほのめかして手懐けていた、ともいう。

 やがて中国内陸では曹操(そうそう)が袁紹(えんしょう)を討ち滅ぼし、その一族を完全に駆逐しようとした。
その袁紹の次男と三男が公孫康の領内に逃げ込んだのを知った公孫康は、これを庇護するどころか、あっさりと殺害して曹操に届けた。曹操は喜び、公孫康に左将軍と襄平侯の地位を与えて、さらに魏に味方させるべく懐柔しようとしたのである。

 三国志にいう三国とは、魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)をいう。が、もう一つ、朝鮮半島における公孫氏の一大勢力がある。
 その地理的条件において、魏と呉それぞれに味方に引き入れたい大勢力であった。公孫康の死後、彼の実弟である公孫恭(こうそんきょう)が跡を継いだが、彼もまた魏によって車騎将軍・襄平侯の位を得ている。しかし、公孫恭は甥(公孫康の次男)の公孫淵(こうそんえん)に討たれてしまう。
 曹操は公孫淵に対しても懐柔すべく手を尽くしているし、魏のみならず呉も公孫淵の歓心を買うためだけに、彼を燕王に封じている。ただし、燕は他の三国とは違い、完全独立国ではなかった。あくまでも呉の庇護のもとに認められていたに過ぎない。
 この時期、厳密には、公孫淵が燕王になる三年前に渦目が急死した。

【おおやけには病没とされたが、乃麻埜(のおの)はその著書『愛媛国縁起』の中で、その前後の嘉汰耶と卑弥呼の言動を推察し、渦目の食事に微量の毒を混ぜて、徐々に体力と気力(霊力)を衰えさせた上での卑弥呼の呪詛による暗殺と結論づけている・・。】

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 15:34 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

2009年01月29日

歴史小説愛媛の古代史・・、てか媛国って、現在日本に似てない?!ホントよね、やっぱ昔からそうだったのかしら?!ううん、違うよ!!読めばわかるさ!!

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愛媛国縁起

平和呆けの国
        二
「明日こそは、みなで手分けして、姫様をお引き留めするのじゃっ、よいなっ」
 そう云い捨てて、楓(かえで)は御霊屋に急いだ。御霊屋は高床に太い丸太を組み上げた大きく堅牢な建物で、屋根は分厚く見事な桧皮葺きである。そこは、媛の女王であり愛姫の祖母である美弥毘(みやび)が、独りで暮らす神所であった。

 少し肩をいからせた楓が足早に近づくと、階段の手前では門番が二人、互いに左右から重ねた石槍を解いた。
「役目、苦労じゃのもし」
「はっ」
 焚きしめた香がほのかに漂う御霊屋の内は暗く、目が慣れるのには暫くかかる。
「美弥毘様、楓でございます。お呼びとのよしにて、まかりこしましたんですけんのもし」
 その声に応えるかのように中空に、ぽぅ、と小さな灯がともり、それが糸を引くように降りてきた。二階から梯子が降ろされたのだった。楓は慣れた身のこなしで梯子を登り、二階の部屋の前では、侍女が静かに頭を下げた。
「楓様、どうぞ」
「はい、御苦労様」
 楓も丁寧に頭を下げ、部屋の内に入った。
「お早うございます、美弥毘様」
 二階は大きな明かり取りの窓が開けられており、ちょうど陽光が差し込む辺りに藁で編んだ丸い座布団が敷かれ、その上に老婆が独り背を丸めている。床まで届く長い髪は見事な白髪で、ゆったりとした純白の衣に細く赤い帯を巻き、皺立つ首には透明に鮮やかな赤や青の勾玉をぐるりと垂らし、目の前の床に広げた絵図に視線を落としていた。
「今朝も、愛は行ったようじゃのもし」
 錆びて低いが、優しい声である。
「もっ・・申し訳ございませぬことで」
 と、楓は床に平伏して詫びた。
「よいよい。主神々様の、よほどのお気に入りじゃけん。ついに礼儀作法など、あの娘にはいらぬものかも知れぬぞよのもし」
「恐れながら、美弥毘様、主神々様はよくても村の長老達の中には、何かとうるさく云う者もおりますれば・・もう少しなりと御行儀を・・」
「わらわは聞かぬぞえ。それどころか国中の村人達も皆、慕っておると聞く」
「そっそれは、まことではございますけれど・・・けれども美弥毘様、思うてもくださりませよ。お側役としての奴我【やつがれ=私】の事映【ことばえ=面目】が・・」
「立たぬかえ」
 と、美弥毘は明るく笑った、その窓辺には小鳥達がさえずっている。
「ほっほっほっ。誰も、そなたを責めてはおらぬわ。愛は真護(まご)様と納南(なな)様に育てられたようなものじゃ。あれでよいのぞなもし」
「されど、美弥毘様・・」

 実は、この美弥毘こそが、他国出身の女王なのである。
この、歴として重厚なる伝統を誇るべき媛国は、正統な国主を失う、という悲惨な戦火に炙られた後、そこに暮らす民人の精神をも、たとえば蚕が桑葉を食らうがごとくにじわりじわりと蝕まれてゆく、という末期的異変を養っていたのである。
 大陸などに在る異国との交易が盛んになるにつれ、目新しい文物にふれて歓天喜地【かんてんきち=非常に喜ぶ事】していた頃はいい。物質的な豊かさに憧れながら、しかも徐々に日常の暮らし向きが向上しつつある頃はよかったのである。
やがて欲求が満たされ、その幸福があたかも金品によってのみ実現される、という誤解こそを恐れるべきであったろう。
 まず、美弥毘の側近として国政を司る長老達の内に、その特権を逆手に私利私欲を満たして国民を蔑ろにする厚顔無恥な輩が出始めたのだった。そうして、いつの世も若衆達は、時代の醸し出す芳香に敏感なのである。
「媛国なんか、もう古いけんのう」
 と云い出す者が増え始め、ついには・・
「もう媛歌【媛国歌】は、歌わんほうがええぞなもし」
 と煽動する者が出てきて皆が喝采し・・
「やっぱり大陸の衣裳が、かっこええわ。髪の毛も染めて髪型も真似したろや。言葉なんかも、ちょっと取り入れたら流行るぞな」  と、風潮が乱れ始めた。

 国存亡の危機とは、信じがたいほどに阿呆な指導者を選出するものか、長老頭【現代にいう総理大臣に準ずるであろう】が率先して
「いずれは大陸言葉を、吾国の第二公用語にせにゃならんぞなもし」
 と、まさに愚の骨頂を極めているのだった。
美弥毘は、そうした媛国衰亡の匂いを感じるにつれて気がふさぎ、憂鬱な日を数える事が多くなっている。
 これこそが、あるいはパラシュラーマの戦略であったかも知れぬ・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 11:23 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

2009年01月28日

愛媛県の古代史に移るよ・・。エーン、じゃあ暫く都祢那賀君とは会えないのね。ダイジーブ!!また、必ず会えるさっ!!

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愛媛国縁起

平和呆けの国
         一
 この都祢那賀(つねなが)が狙う媛国(ひめのくに)とは、いったいどんな国であったか。古文書に見る。
 この石鎚山一帯には、いにしえより人々が集い、一つの大国が営まれていた。その国の名を媛という。媛は大自然の恩恵を、その一身に浴びるような国であり、人々は温暖な気候さながらに穏やかな気風で、それにつけ込む近隣の国々は寒風山や笹ヶ峰を越え、また瀬戸内の海を越えて、幾世に幾度となく攻め入った、という。
 媛はさながら、国境を越えて荒ぶる他国に犯されながら震え続けているようなものであり、しかも媛を守るべき兵が、敵に攻められれば必ず砦を破られ、押し返したためしがないというほどに弱い。 しかし、不思議な事には、媛を蹂躙しながらも征服しえた国がないのであった。
それは、石鎚におわします神々が、媛をいたぶる者どもを、一度たりとも許さなかったからだ、というのである。
 この一帯を神野という。

《古来幾つもの国々が媛欲しさに目がくらみ、神野までせまった者どもはことごとく滅ぼされた》

 とは、遠く北の果てから南の果て、さらには大海を渡った大陸にまで知られた伝説であった。
 また、媛歴代の女王は初代より世襲されていた、ともある。
が、この四〇年ほどの前に、他国出身の女王に変わった。
女王はいわゆる巫女であり、女王自ら、石鎚におわします神々に祈りを捧げて加護を賜り、媛国を治めているのだった・・。

 その、媛国の女王が住み暮らす屋敷は、高守山の中腹に在る。
「姫様っ、お待ち下さいませやっ、今日こそは行かせませんけんのもしっ」
「聞こえませぬ。父様と母様が待っておいでじゃ。亜矢(あや)、参りましょうぞ」
「行かせませぬっ」
 楓(かえで)はそう云って、大胆にも馬の前に飛び出し手綱を握った。亜矢は姫の愛馬である。姫の幼い頃から共に育ち、姫の言葉を解するほどの駿馬であるが今ばかりは、楓に怪我をさせてはならぬ、と足掻きもせずに手綱をあずけていた。
「みなっ、何をしておるのじゃっ、早う門を閉ざしなされっ」
 楓は、それこそ必死で叫んでいる。おとなしく手綱をあずけてじっとしているとはいえ、亜矢は大きい。楓としては自棄でも叫んでいなければ、つい気を失いそうであった。

 それに今日こそは、お側衆筆頭の面目にかけて、何としても姫に女王作法を教授しなければならぬ、と堅く決めているのである。
「さあっ、姫様っ、観念なされて、おとなしゅうなされませっ」
「楓・・堪忍」
 姫は馬上、素早く手綱を解き、亜矢の鬣につかまった。
その途端、亜矢は高々と前足を上げ、あっ、と後ずさった楓と、門を閉めようとしていたお側衆達を飛び越えて外へ出た。
 そして、その場で戛戛(かっかっ)と足踏みして屋敷を振り返った。
「あっ愛姫(あいひめ)様ぁっ、お戻り下さいぃぃっ、さもなくばっ」
「なぁに」
「お祖母様に云いつけまするのぞなもしっ」
「楓、私は巫女です。お茶やお花など習う暇に、神様とお話した方がよいのです」
「作法も女王のたしなみですけんのもしっ、そのようにお転婆では、いずれ神様にも呆れられてしまいますのぞえっ」
「嘘ばっかり。父様も母様も、他の主神様達だってみんな、私を可愛がってくれております。そんな嘘を云う楓こそ、主神様達に云いつけて叱ってもらいます」
 愛姫は楓が大好きで、今もからかっているのだ。しかし、楓は必死であった。
「主神様達も恐いけれど、お祖母様に叱られる、私めの身にもなって下さいまし」
「きゃっ、それが本音」
 愛は上機嫌で笑い、くるり背を向け、村の山坂へと走り始めた。
「愛姫様ぁっ、どうかっ、どうかお戻りをぉぉっ」
 楓は、大門にすがって声をかぎりとて叫んだが、もう愛姫にはとどかない・・。

「やれ、楓様。今日もしくじりましたのもし」
 と、付人達が笑った。
「お黙りっ、明日からは、大門を開ける事なりませぬぞえっ」
「それは無理というものじゃけんのもし。朝早くからお詣りにこられる村々の長達が困りますわいのもし」
「ならば、今宵からは、わらわが姫様の寝所で寝ずの番をするまでじゃ」
「しかしながら、楓様。姫様が石鎚のお山に向かわれるのはええとして、下里を遠駆けなされるのは、これはお諌めなされた方が、ええかも知れませぬぞなもし」
「なにゆえじゃ・・、真濃(まこし)」
「へえ、下里には働手の若衆が大勢おりますで」
「それが、何ぞの不都合かや」
「姫様がお通りになる度に、若衆の手が休むとか・・」

 媛には美人が多い、とは、他国の人々の噂にまでなっている。が、その媛の若衆達が夜に集いて酒宴のあちこち、どこでもまず
「媛で美貌の娘なら」
 と、すぐ名前の上がるのが・・
「高守の愛姫様じゃ」
 であった。
その後には・・
「石鎚山の絶壁に咲いた花じゃけんのう」
 と、誰もが大溜息をつくのである。
その愛姫が里の村々を遠駆けすると、仕事する若衆の手が止まるらしい。高守屋敷に朝詣にくる長老達が下足番の真濃に
「親方衆が弱っとるわい」
 と、これは嬉しげに話していた、というのである。
真濃とて孫ほどに歳の離れた愛姫が、そんなふうに誉められるのが何より嬉しいらしく
「姫様もお年頃ですけんのう」
 などと、つい楓に軽口をたたいているのだった。

「それが、どうしたと云うのじゃ。そちらには関係も無いに」
 楓には、諧謔(かいぎゃく)がつうじない。
「悪い虫がついたら大事ですけんのもし」
「あっ阿呆なっ、なんと罰当たりなことをっ」
 ついには楓、それこそ真顔で怒り出した。
「楓様ぁ、美弥毘様がお呼びですぞぉっ、楓様ぁっ」
 屋敷の奥の御霊屋から使いの侍女が手を振った。
側の付人達が、くっく、笑った・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 15:24 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

2009年01月27日

話題沸騰!!歴史小説古代日本史には邪馬台国の物語だぜっ!!ああん・・、もっと読みたいわあ!!うん、ありがとう!!できるだけ更新していくからね!!

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愛媛国縁起

本陣にて・・
         五
「まず、邪馬台国の山野を見よ。そうして、砂鉄を多く含んでおる場所を教えよ」
「まだ切り崩すつもりかえ」
 パラシュラーマは、呆れた。
かつて、都祢那賀(つねなが)の祖父である嘉汰耶(かたや)達が移り住んでから、畿内の山々は太古の形をとどめるどころか、日々変わり続けていると云っていい。
 豊かだった樹木は大量に伐採されて都の建築資材となり、削られた土砂は道路や地均しに使われている。たまたま砂鉄が出た山などは無惨であった。蟻が砂糖菓子に群がるようにして奴婢【ぬひ=奴隷】が働かされ、踏鞴吹場【たたらふきば=製鉄所】が設けられているのである。

 ついに都祢那賀が軍を率いるようになって後には、その切り崩しようが甚だしい。
この若者が戦をする度に、倭国の地形が変わってゆくのである。
「おう。俺の欲しい物が海にあるなら、大海のすべても涸らしてくれるわ」
「まさに、欲望の塊のような男よのう」
「人間すべて同じだろう。何しろ人間とは、明日の天気を知りたがる者だからな。そして、うぬらのような、邪神や悪魔や邪鬼の類は、そんな人間の欲望が餌であろうが」
 これは寝物語に那薙(なち)が教えた事であったが、パラシュラーマはいたく感服したらしい。
「まことっ、その通りじゃっ」
 と云った。
「人間にしておくのが、惜しいほどの奴じゃのう、よかろうっ。しかし、都祢那賀、倭国で大量の鉄と云えば・・」
「筑紫【つくし=九州】だな」
「そうじゃ」
「媛攻めの一段めだ」
「何じゃと」
「俺はまず筑紫を突く。筑紫に邪馬台国の旗を立て、大量の鉄と兵を手に入れ、媛を挟撃するのだ。戦の炎で人間の心を焼き尽くし、憎悪の塊と化して信仰を枯らせば、媛の神々どもは息もできまい」
「オォ、何とも旨そうな話じゃのう。その筑紫攻めに加勢せよ、と云うのじゃな」
「そうだ。俺の軍勢をもってすれば勝利はゆめ揺らがぬが、筑紫全土を制圧するには時がかかる。その時を縮めるのが・・うぬの役割だ」
「承知じゃ。筑紫に戦の炎が上がったなら、わしの手下どもが風をおこし嵐を呼び一気に燃え広がらせて、手向かう者ども一人残らず骨と灰にしてくれるわ。それにな・・」
「んっ」
 都祢那賀は、ゆらぐ炎にむかって、その癖で、小首をかしげている。
「うぬが媛国を欲しておる事は分かっておったでな、すでに物見を忍ばせてあるぞ。わしの四魔軍勢もな、媛国民の内心深くに忍び入って、じわりじわりと侵攻しておるわい」
 と云いながら、炎が妙にくねったのは、すでに媚びているようにしか見えない。

「さすが神の端くれだな」
 と、都祢那賀は誉めてやった。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず、じゃわいなあ」
 大邪神が得意げに応えたあたり、やはり媚びている。
「知った敵が手におえぬほどに強ければ、大邪神としてはどうする」
「逃げるのよ。うぬが人間どもの心を荒ませて、主神達の息があがるのを待つ」
「よかろう。その腰抜けぶりが頼もしいぞ、パラシュラーマ。この都祢那賀が信用するに足るわ。闇雲にいきがる愚者を味方に戦うほど、危うい事はないからな」
「人間の憎悪を煽るのは、同じ人間でなければできぬ所業よ。のう、都祢那賀」
「見直したわ。贄(にえ=生贄=供物)には、何を望むのか」
「人間の邪知と憎悪と鮮血と・・」
「と・・」
「若く美しい女を辱めたい」
 パラシュラーマが照れくさそうに炎をよじった時、都祢那賀は呆れたような顔をした。
「阿呆とはひどかろう、無礼者め。わしは大邪神ぞ。少しは畏まれや」
 読心とは・・、あまりの阿呆らしさに、つい都祢那賀の心底がゆるんだらしい。
「あの二人のように融かされぬほどには気をつけよう。骨まで消されてはかなわぬ」
「都祢那賀よ、もとより、うぬが死ぬ時は骨も残らぬわいなぁ」
「ほう、なぜだ」
「うぬは人間の皮を被った悪魔じゃでのう。悪魔は骨も残せぬわい」
「ふむ。それもよかろう。が、それならそれで魔王と呼べ」
「まことっ、魔王じゃっ」
 傍らで那薙は微笑し、結んでいた手印をとき、手ずから新たな薪を一本燃べてやった・・。

 パラシュラーマ、仏教よりも古いバラモン教を源流とする密教における大邪神である。乃麻埜(のおの)は《罵羅棲裸魔》と表記している。人類有史上、この大邪神は四魔軍を率いて自在に時空を越え、現世に破壊と混乱をもたらしている。
 四魔軍とは、邪神と悪魔の連合軍であり、第一軍団から第十軍団に区別されている、というのである。
その攻撃目標は、人間の精神である、ともいう。
まず、第一軍は〈楽欲〉を仕掛けて、人心を堕落させるらしい。
第二軍は〈不快〉、第三軍は〈飢渇〉、第四軍は〈愛欲〉をあやつって、いわゆる煩悩の炎に油を注ぐ。
そうしておいて第五軍が〈懶惰(らんだ=怠ける、怠る、無精〉の心を植え付け、第六軍は〈怖畏(畏れおののく情)〉をもって人心を虚しくしてしまい、第七軍は〈さいぎ=猜疑(嫉妬と疑いの念)〉をはびこらせ、第八軍では〈虚栄〉をもたらし、ついに第九軍では〈名利=みょうり〉を与える。
 そして殿備(しんがりそなえー隊列の最後となる軍団)の第十軍は、〈驕慢(おごりたかぶって他人を軽蔑し侮る)〉という精神状態に陥れてしまい・・、つまりは人間として生まれてきた事を無意味なものにする、というのである。
 実に手の込んでいる、しかも巧緻で確実な作戦ではあるまいか。パラシュラーマは、これを自在に操る大邪神なのである・・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 16:56 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

2009年01月26日

古代インドの大邪神が、ボワッと登場だよ!!えーっ?!ますます怖いわあっ!!ダイジョーブさ!!都祢那賀君がついてるからね!!

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愛媛国縁起

本陣にて・・
      四
「さすがじゃっ、それでこそっ、わしが見込んだ男よっ、のうっ、都祢那賀(つねねが)っ」
 赤みを帯びた橙色に透き通る炎の中に、黒く不気味な影が激しく揺れている。
「パッ、パラシュラーマ様っ」
「お助けをっ」
「たわけ者どもめが。何たる醜態ぞ」
「ほう。うぬが摩伽陀(まがだ)の神か」
「都祢那賀よ、今申した事がまことなら、場合によっては、傍らの娘をも殺さねばならんぞ。それどころか倭国にて巫女を名乗る者ども、すべて殺さねばなるまいて。どうじゃ」
「知れた事だ」
「そっそんな・・」
 都祢那賀は怯える那薙(なち)を抱き寄せ・・
「那薙よ、そなたは別だ。安心せい」
 と云った。
「おや・・、まだ甘いのぅ」
「この娘はな、巫女でありながら、神々を攻め滅ぼせと云う者ぞ。この娘の中に、もはや神は生きられぬのよ、のう」
 都祢那賀は、那薙を抱く腕に力を込め、那薙は都祢那賀の胸に頬をすり寄せながら、二度ばかり深く頷いた。

「まあ、よいわ。そこに転がっておる男の読心術を欺いたほどの人間は、うぬが最初じゃ。誉めてつかわす。それに、わしはな、うぬのような人間には切っても切れぬ仲じゃわい」
「いい気なものだな」
 都祢那賀は、ますます燃え盛る炎に向かって、せせら笑った。
「幼少の頃より見飽きておるわ。どうせ、卑弥呼(ひみこ)の口寄所にたむろする邪神や邪鬼の類だろう。どうだ、いっそ俺を呪い殺すか」
「・・・それを望むかえ」
「卑弥呼が呼んだかよ」
「何じゃと」
「呼ぶまい」
「都祢那賀よ、少しは畏まれ。わしは邪神や悪魔を一手に束ねる大邪神ぞ」
「それなら、卑弥呼のもとに出入りする邪悪な者どもの親玉だな。どうりで醜い上にも醜いわ。大邪神様よ、うぬの手下どもはな、卑弥呼が畿内より駆逐した出雲の神々にさえ怯えておるほどの体たらくぞ。うぬは、邪馬台国をして倭国を制せしめんと申しておるらしいが、それなら媛(ひめ)の神々をも滅する力があるのだろうな」
「媛国の神はなかなかに・・」
「手強いか。ふん、つまらぬ。ただの腰抜けだな」
「無礼者めがっ、見よっ」
 赤黒い炎が、いっそう激しく揺れて火の粉が舞い散った時
「ぎゃあ」
「げっ」
 縛られて転がっていた摩伽陀人達が、喉を絞るような悲鳴を上げた。その二人の身体がどす黒く濁った煙を上げ、焦げた松脂のように黒く融けてゆく・・。

 やがて、その骨さえも融けてしまい、何とも不気味に縄だけが残っている。
「見たかっ、人間ごときが神をなぶるなっ」
「うぬが神だと・・、笑わせるな」
「何じゃとぉ、都祢那賀、うぬも融かされたいかっ」
 周りが、にわかに慌ただしくなった。
剣や手槍を携えた兵士達がごった返し、喚き散らす炎を囲んでいるのである。
「笑止千万、人間の武器で、わしをどうにかできるとでも思うてか。その剣で炎が切れるかやっ、炎を消しても、わしは死なぬぞえっ」
「俺の兵の武器にはな、卑弥呼の執念が入っておるそうだ。それは痛いらしいぞ」
 都祢那賀は腕組みなどして胸を張り、落ち着いている。
「馬鹿めがぁっ、やれるものならやってみよっ」
 炎、いや、大邪神は吼えに吼えた。
「そうわめくな。真の神ならば、下策な芝居など打つ前に殺せ。ここまでして俺に取り入ろうとするからには、何ぞ、やむにやまれぬ事情があるのだろう」
 都祢那賀は眉一つ動かさず、まだパラシュラーマをなぶる事をやめない。
「・・貴様ぁ」
「那薙よ、どうだ、この大邪神様は、そなたの手にはおえぬかよ」
「確かに、なみならぬ邪気にございます」
「さすが卑弥呼の孫娘、わしの恐ろしさが分かるようじゃの」
「あなた様にも、すでに、巫女の恐ろしさが分かっているでしょう」
 那薙は炎を見つめ、両手を合わせた。
その細い指が別な生物のように動き始めたのは、呪印を結ぼうとしているのである。
「いっそ刺し違える覚悟なら、あなた様を呪縛する事もできまする」
「死ぬる気かえ」
「鬼道に生きる巫女なれば・・呪縛に懸命などは望むところにございます」
「まっ待てっ、はやまらずと、よう聞き分けい。わしと手を組まぬか、という話ぞよっ」
「ならば申せ。何が欲しいのだ」
 と云いながら、都祢那賀は手のひらで合図した。
周りの兵に、退け、というのである。兵士達は囲みをといて散り始めた。
「・・・復讐したいのじゃ」
「人間にか」
「いやさ、それなら造作はないわい」
「なるほど。相手は摩伽陀の真の神だな」
「・・まあ、そんなところじゃわいなあ」
「煮え切らぬ奴だな」
「うぬには倭国をやる。わしは倭国の邪神と邪鬼どもを従えて軍勢を整え直し、うぬら人間が真の神々と呼ぶ者どもを、一気に攻め潰したいのじゃ」
「それで鬼道に目をつけたか」
「鬼道が栄えるは邪馬台国が栄える理じゃ。それでわしらも栄える。そうじゃろう、のう、那薙よ」
「呼び捨てなどは許しませぬ」
 那薙はぴしゃりと決めつけ、急に炎が小さくなったのは、おそらく大邪神パラシュラーマがたじろいだのであろう。
 そんな光景を見ながら、都祢那賀は上機嫌で哄笑した。
「あてにはならぬが」
 と、都祢那賀は炎に一歩近づき・・
「それも一興だな。人の一生は短いものよ。生ある内に志を遂げるには、無駄な苦労はせぬ事だ」
 と云った。もう真顔である・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 13:53 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

2009年01月25日

邪馬台国の物語・・、いっそ更新は夕方にしようかなあ・・。どうしたの?!調子わるいの?!いやあ、そういうワケじゃあないんだけど、ちょっとね・・。

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愛媛国縁起

本陣にて・・
         三
 都祢那賀(つねなが)はひれ伏した摩伽陀(まがだ)人に背を向け、那薙(なち)を連れては、さっさと引き返し始めた。
人垣が割れ、大路の向こうに声の主の店が見える。
その店先で、金銀の飾りが陽光を照り返して輝いていた。
 平伏していた摩伽陀人は無言のまま、慣れた手つきで荷物をまとめ、都祢那賀の後を追った。都祢那賀達が店先に着くと、すでに店番も荷物をまとめ終えて、深々と頭を下げている。
「素早いのう。うさんくさい奴らめが」
 都祢那賀は落ち着いた口調で云い捨て、那薙の腰を抱くように寄り添って、悠々と歩いてゆく。しかし、那薙には、周囲の目が気恥ずかしいらしい。
「都祢那賀様、恥ずかしゅうございます」
「したいのよ」
「えっ」
 都祢那賀の、したいこととは、すなわち那薙との交接であろう。
二人の摩伽陀人は黙ったまま、その後ろを少し離れて歩いた。
間をあけているのは抜撃を警戒しているのであろうが、店番をしていた摩伽陀人は時々妙な忍び笑いを浮かべた。

 市場の雑踏を離れ、野菜などを積んだ荷車をやり過ごすために道の端に足を止めた時である。店番の男は、仲間の耳元で自国語を囁いた。
「どうにも、たまらんぞ」
「何がじゃ」
「将軍の頭の中はのう、姫との秘事でいっぱいじゃ」
「へえ」
「こりゃあ、どうじゃ。かの美しき姫の秘所さえもが、隠すことなく丸見えぞ」
 どうやら、都祢那賀の心を読んでいるらしい。
薮の道は深い轍が抉られ、頭と腹を潰されて死んだ一匹の蛇(くちなわ)の骸(むくろ)が長々と横たわっていた。まだ水気を失っていないのは、死んで間もないものなのであろう。
都祢那賀らの気配に驚いた蠅が、それを離れ飛んでゆく・・。

 やがて一行は、都祢那賀の陣屋敷に着いた。
門番や警護兵が列を整えつつ出迎える中、都祢那賀は不意に那薙の細腰を抱き締めた。
「おっお戯れを」
 と那薙が慌てたのと
「こやつらを縛り上げろ」
 と、都祢那賀が兵士達に命令したのとが同時であった。
兵士は命令に敏い。
「ええっ」
 虚をつかれた摩伽陀人達は逃げそこね、あがらう間もなく手足を縛られて、庭にころがされてしまった。
「どっ、どういうおつもりじゃ」
「うぬら、人の心が読めるのだろう。いちいち聞くな」
「そっ・・それは」
「綺麗であったろう」
 裸体で乱れる那薙は、である。
「神の力とやらはどうした。うぬらの真の力では、その縄さえも抜けられぬか」
「都祢那賀様、何が綺麗だったのでございますか」
 都祢那賀を見上げて、那薙が不思議そうに聞いた。
「後だ」
 都祢那賀は那薙を離しながら・・
「庭に火を起こせ。こやつら、焼いても死なぬなら本物ぞ」
 と周囲に命令し、兵士達は機敏な動作で薪を用意し始めている。

「おっお待ち下され、お待ちをっ」
 摩伽陀人の叫びは、もはや悲鳴に近い。芋虫のようにもがき、血走った眼を剥いてわめいている。その周りに散乱した装飾品が美しい物だけに、よけいに摩伽陀人の哀れさを際立たせた。
「ふん。我国ではな・・見よっ」
 都祢那賀は、叫ぶと同時に抜刀して腰をひねり、庭先を歩いていた鶏の首をはねた。首は桧皮葺きの屋根ほどに高く飛び、斬られた鶏は首の無いままで、何事もなかったかのように数歩進んでから静かに倒れた。
「首を飛ばされた鶏でさえ、このように歩いて見せるぞ。うぬは先刻、泥人形に魂と生命を与えたと申したはずだ。生命を思いのままにできる真の力とやらで、鶏づれを越えて見せてみよ」
「違うっ、違いますっ、わしらは、ただの遣番ですっ、わしらの主こそが真の神じゃっ」
「吾らはただの人間っ、焼かれれば死にまするっ」
 摩伽陀人達は、泡のような唾を飛ばして喚いた。
「ざまあないのう。我国の巫女はな、女の身でありながら、うぬらよりも潔いわ。うぬらが仕えるという摩伽陀の神も、どれほどのものやら疑わしいものだな」

 さすがに兵士達は手慣れたものである。庭には桧柴と枯木が積み上げられ、たちまち炎が勢いよく燃え上がった。
「さて、店番から焼いてみようかのう」
「おっ・・お助けぇっ」
「都祢那賀様、暫しお待ち下さいませぬか」
「何だ、那薙、まだ助ける気か」
「どうせなら殺す前に、この者達の神とやらを、この眼で見てみとうございます」
「ほう。媛の神をも攻めよと云うそなたが、異国の神などを見てみたいと申すか」
「御意」
「やはり生まれついての巫女よのう。血は争えぬようだな」
 都祢那賀は呆れたように云い、
那薙はふと微笑み、荒い息を懸命に抑える摩伽陀人達を見おろして応えた。
「鬼道とは、そうしたものにございます。まこと偉大なる神なれば味方に引き入れましょうぞ。さすれば、都祢那賀様の向かうところ敵なし、ともなりましょう」
「出雲ではな、神族が手ぐすねひいて俺の軍勢を待ちかまえておるそうだ。淡道の向こうに浮かぶ島国には媛(ひめ)と呼ばれし国ありて、太古より真護(まご)一族なる倭狼主神(わろうぬしがみ)をはじめ、あまたの主神おわしまし、媛国と一切衆生を育み守りたもう。国興り、また滅ぶ。しかれども、媛国にこの理は無し。いにしえより幾多の国々、媛を侵したまわらんと企てどもその想い遂げたる国、これ未だ一国とて無し、という。つまりは」
 言葉を区切って、都祢那賀は眼を細め
「俺が初めよ」
 と、云い切った。
「然ればなおの事、異国の神を頼ったがよろしいかと」
「神は神をもって制すか」
「御意」
「神どうしの争いなら、我らに罰もあたらぬ・・か」
「御意」
「おっおおっ、そっそれっ、吾らの神こそは、邪馬台国をして倭国に覇をとなえさせんと申しておりますぞえっ」
 摩伽陀人は身悶えして媚び、都祢那賀はそれを見据え
「俺をなめるなっ、神が何ほどのものぞっ」
 と大喝した。この若者は、さらに云う。
「神とは、信仰する人間の祈りによって生まれもし滅びもするものぞ。さすれば、その神を奉る人間どもを滅ぼせば、後は勝手に廃れ立ち枯れてゆくのが理(ことわり)だ」
「つっ都祢那賀様、まさか・・」
 さすがの那薙もこれには驚き、言葉が続かない。
ついには巫女を抹殺する・・、と云うに等しいではないか。
 那薙は呼吸さえ忘れたかのように、身を竦ませていた。
その時である。枯木を焼く炎が、風もないのに一段と高く燃え盛ったのである・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 18:41 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

2009年01月24日

連載歴史小説日本古代史・・、明日のさきどりアップだぜ!!えっ?!ファンサービス?!うん、それもあるけど、明日はちょっとバタバタするからね。

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愛媛国縁起

本陣にて・・
          二
「ふん。まやかしの類だな」
 と笑った都祢那賀(つねなが)の耳に
「違う。魂と生命を与えたのじゃ」
 と、さっきの店番の声が響いた。その声を振り向くと倭人達ばかりで店番はいない。那薙(なち)が、都祢那賀の腕にしがみつくようにして、ただ見入っているばかりであった。
 その那薙が
「あっ」
 と小さく叫び、すがる腕にきゅっと力を込めた。
「んっ」
 都祢那賀は、麻布の上の小さな人間に視線を戻した。
華麗な模様に織られた麻布の上で、その小さな男女は、服を脱ぎ始めている。観客の内から下卑た笑い声と歓声が沸き起こったが、やがて裸になった男女が抱きしめ合い、互いを愛撫し始めた時には、しんと静まり返って、再び息をひそめて真剣に見守っていた。
 事が終わり、小さな男は服を着て、横たわったままの裸の女の側に腰をおろして胡座をかいた。すると、女の腹が少しずつ膨らみ始めたのである。もう、誰も笑わない・・・。

 都祢那賀と那薙も、ただただ息を殺し、じっと見つめていた。
女の腹が張り裂けるほどに膨れた時、女は脚を開き、その全身を仰け反らせて力んだ。
ほどなく女の股の間から、赤い何かが産まれ・・
「ふぎゃあっ、ふぎゃあっ」
 と、まさに産声が高らかに響き渡ったのである。
男が臍の緒を切りて、女が赤子を抱きしめた時には、観衆が一斉に感動の叫び声を上げ、手を叩いて飛び飛びをする者、足を踏み鳴らして踊る者、近くの者と抱き合い肩を叩き合って喜ぶ者、そのすべての人々は一様に仰天した表情で、すぐに皆、押し合いながら布の側にはいつくばり、小さな三人の人間を覗き込み始めた。

 これを現出して魅せた摩伽陀(まがだ)人は、にこりとも笑わず、険しい目つきで低く呪文を呟き続けている。が、そんな群衆の中で、都祢那賀と那薙だけは醒めていた。
「人形に生命を与え、さらに新たなる生命を宿したか・・なるほど、神の力だな」
 言葉づらは感心しているようだが、都祢那賀は薄笑みを浮かべているのである。
「お気に召しませぬか?それとも・・・あぁ、まだお疑いはとけぬようじゃな」
 また都祢那賀の耳に、店番の声だけが響いた。もう、都祢那賀は振り返らない。
「けけっ。この程度の見せ物は、幼い頃より見慣れておるわ。のう、那薙よ」
「お連れの姫様は、卑弥呼様のお孫様にございますなぁ。しかしながら・・」
「何だ」
「恐れながら、卑弥呼様の呪術などは・・鬼道におわす」
「しょせんは、人間のまやかしに過ぎぬとな。では、この男の術は、まやかしではないと申すか」
「御意」
「ふむ。那薙よ、そなたはどう見る」
「まやかしです」
 那薙はきっぱりとした口調で云い、静かにしゃがんで、布の端を摘んで引っ張った。その途端、布の上で生き生きと動いていた小さな人間は、ただの土塊に還ってしまった。

 観衆もはっと我に返った。皆、さも深い夢から覚めたような顔で、その土塊や隣人の顔を忙しく見合わせ、不思議そうに小首を傾げたりしている。
「どうだ、店番」
「おぉ。さすが、神をも恐れぬ都祢那賀様に那薙姫様じゃ」
「今さら功言は遅かろう。うぬ、人の心を読む術も心得ておるようだがな、俺は、まやかしならまやかしでもよいのだ。ただ・・」
「まやかしをまやかしではないと、たぶらかすのは許せぬようで・・」
「うむ。せっかくのうぬの趣向、気の毒だが・・この目の前に座った男、斬って捨てる。その後は店番、うぬよ・・覚悟せい」
 都祢那賀が腰の刀の柄に手をかけた時、目前の痩せた摩伽陀人がふらりと立ち上がり、都祢那賀と那薙に近づいてきた。
那薙は、さっと都祢那賀の後ろに身を隠した。
「無駄だ。俺には幻術も妖術も通じぬ。うぬらが神の類なら、斬っても死なぬはずだな。しかと確かめてくれるわ」
「暫し。暫しお待ちを」
 店番の声が都祢那賀の耳の奥で叫び、よろめくように近づいてきた摩伽陀人は、無言で都祢那賀の前に平伏した。
「俺にはな・・命乞いもきかぬわ」
「我らの真の力、お見せしとうございます」
「くどい」
 都祢那賀がそろりと剣を抜き放ち、そのまま振り下ろそうした瞬間である。
「都祢那賀様、お待ち下さい」
 と、那薙が素早く都祢那賀の前に回り込んで止めた。
「どうした、那薙らしくもない。これくらいの術は、そなたにも使えようものを」
「この者の真の力とやらを見とうございます」
「ほう」
 都祢那賀は、息を抜いた。
「切り捨てるのは、その後でもできましょう」
「うむ」都祢那賀は、剣を鞘におさめた。
「ありがたや。ではさっそくに御屋敷の方にて」
「ここでは見せられぬとな」
「ぜひ・・御屋敷の庭にて」
「・・・よかろう。もののついでだ。ついて参れ」

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 19:08 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

古代日本史歴史小説なら、やっぱ邪馬台国だよね!!そうよね!!卑弥呼さんなんか、すっごく気になっちゃうわあ!!じっくり読んでね!!

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愛媛国縁起

本陣にて・・
     一
 都祢那賀(つねなが)は軍団に対しては絶対的独裁者であるが、民衆に対しては非常に優しく接した、という。
この若者は生来、人の賑わうのが好きなたちであり、鵯ノ市(ひよどりのいち)にもよく一人でぶらりと足を運んだらしい。
 市はほぼ南北に大通りが貫いていて、その両脇には、粗末な木枠に藁葺きの棚【たな=露店】が立ち並んでいる。米や稗(ひえ)、粟(あわ)、黍(きび)、玉蜀黍(とうもろこし)、豆など穀物を大小の桝で量売りする店は国の直営であったが、それらを仕入れて干飯(ほしいい)や餅【もち=草餅・粟餅・茶餅に粽などもある】にした物を商うのは、民の裁量である。
 他に山菜や果実類を並べた店、魚介や海藻、鶉(うずら)・雉(きじ)・鴨(かも)・雀(すずめ)などの鳥肉屋に猪・鹿・狸・兎など獣肉を扱う店を巡れば、川獺(かわうそ)や猿や熊の肉まで買えた。これら生ものを商う店の他、塩漬けや薫製にした物を売る店、削物と呼ばれる干物類を並べた店、また、それらを焼いたり煮炊きして売る店などの他、土器や笊や籠、衣料品、薬草薬餌、異国からは香辛料や衣糧などが運ばれている。
 市の商人達や行き交う民衆は、都祢那賀が来るのがよほど嬉しいらしく、彼を見つけては雀踊(こおど)りして迎え、中には彼の後ろを従者よろしく、ぞろぞろとついて歩く者達もいた。
 彼は気に入った店を見つけると立ち止まり、店番をしている者に声をかけてやる。すると、たちまちの内に人だかりができて、その店の品物は飛ぶように売れた、というから、やはり大した人気であったのだろう。

 やがて、兵馬も充分に休養して志気を盛り返し、都祢那賀も次の戦の軍慮を練り上げたある日、彼は鵯の市の見納めのつもりか、珍しく那薙(なち)を連れて出かけた。
「那薙、此度の戦は、ちと長くなる」
「さては、いよいよ、媛国(ひめのくに)の神攻めでございますね」
「ほう。巫女のそなたが、神攻めなどを思うか。また、お婆様が怒るぞ」
 都祢那賀は、那薙と並んで大路をゆっくりと歩きながら、上機嫌で笑った。
後ろには相変わらず市の従者達が、これは、さすがに少し遠慮がちに離れてついてくる。大蒜(にんにく)をすり潰した味噌垂物(みそのたれもの)に浸け込んだ肉を焼く煙が、風に乗って香細しく漂っていた。
「・・と申されますと」
 那薙は、ちょっと怪訝そうに都祢那賀を見上げた。
「神を攻めれば罰があたるわ」
「まあ」
 那薙は思わず立ち止まり・・
「お心にもないお戯れを」
 と、頬を膨らませた。
都祢那賀は、邪馬台国の後継でありながら、日頃から信心が薄い。巫女である那薙にすれば、愚弄されたと思ったのである。

 が、都祢那賀は頓着せず、肩をゆすって笑いながら、大路の真ん中を歩いてゆく。那薙は小走りに後を追った。
「都祢那賀様、ええお日よりでございますなぁ」
「鴨の胡麻油炒りなど、味見して下され」
「あら嬉しや。今日は、姫様もご一緒じゃ」
 行き交う村人が口々に叫んでは道をあけ、通り過ぎる都祢那賀達に深々と頭を下げる。
「うむ」
 と、都祢那賀は軽く手をあげて応えてやり、通りかかった小物屋の前でふと足を止めた。耳飾りや髪飾りや首飾りや腕輪など、女性の装飾品が美しく並べられている店で、綺麗な貝や宝石を細工した品々ばかりでなく、金や銀で作られた珍しい形の飾物が、陽光にまぶしく輝いている。
「ほう、綺麗な物だ。渡来物だな」
「御意」
 と答えた店番は、陽に焼けすぎたような褐色の肌を蜜柑色の布で纏い、いわゆる倭人とは違って彫りの深い顔立ちで、地面に座ったまま都祢那賀達を見上げる大きな眼が、いかにも賢そうな深い葡萄色に透き通って光っている。
どうやら都祢那賀は、店先の品物よりも人間に興味を持ったようである。
「赤銅の肌とは珍しいのう。どこから来た」
「はい。吾どもは、西の海の向こう、摩伽陀国(まがだのくに)から来ました。肌は褐色なれど、心などは黒(きたな)くなし」
「ほう、事戯(ことそばえ)の達者だな」
 摩伽陀とは古代天竺(てんじく)に存在した国で、例えば鬼子母神(天竺では訶栗低=はりてぃー、という女神)の故郷である。

【事戯とは、戯れてふざける事、というほどの意である。】

 摩伽陀人は、どこで身につけたのか、倭国語を充分に聞き分け、上手く喋った。
「摩伽陀とは聞かぬ国だが・・吾どもとは何ぞ。他にも仲間がいるのか」
「御意」
 店番は座ったまま、大路の行く手を指差した。そこに人だかりができている。
「邪馬台国は神の国です。摩伽陀も神の国・・吾どもは、この国が好きです」
「神の国か・・ならば、うぬらの国にも巫女がいるのか」
「・・みこ、とは」
「神に祈る女だ。これは、その巫女の女王だぞ」
「おぉ、みこ・・美しい」
「うむ」
 都祢那賀は上機嫌である。
「都祢那賀様、妾(わらわ)は女王ではありませぬ。それこそ、お婆様や母様に叱られますぞ」
「よいではないか。もうすぐの話だ」

「王様」
 那薙にそう云うからには都祢那賀自身も、他者から王様などと呼ばわれて平気である。
「うむ」
 さも、満足げに応えてやった。
「摩伽陀では男が神に祈ります。神の力を思うように使います」
「ますます面白いな」
「あっちで神の力を見せてます・・どうぞ見て下さいませ」
「うむ、行ってみよう」
 と、都祢那賀は那薙を誘った。

 そして、店番を振り返り・・
「後で買ってやる。自慢の品々を出しておけ」
 と微笑んでやり、店番は大仰な仕草で地面にひれ伏した。
そうして、都祢那賀は人垣をかき分け、最前列に出た。
 はたしてそこには、頭に白い布を巻き付け、腰に布を纏って上半身裸の摩伽陀人が、長い顎髭を垂らし、胡座をかいていた。骨と皮ほどに痩せて、やはり肌は黒い。
その摩伽陀人の前には鮮やかな赤や青で綺麗な模様を染め抜いた麻布が広げられ、その上に泥を焼き上げたような人形が二体立っている。よく見ると、どうやら男と女を型どっているのだった。
 摩伽陀人は人形の上に両手をかざし、低くしわがれた声で何やらぶつぶつと呟き始めた。指を盛んに動かしながら、呪文を唱えているらしい。その声に少しずつ力が入り、徐々に甲高くなってゆくにつれて、人形の上にかざした手の動きも激しさを増した。
 暫くして摩伽陀人が怪鳥(けちょう)のような鋭く短い叫び声を発し、ぴたりと手を止め、指が反るほどに力を込めて伸ばし切った時である。面妖(めんよう)なるかな、触れてもいない人形どもが震えて動き出したのである。じっと息を殺して見守っていた人垣が、ざわつき始めた。摩伽陀人が再び叫ぶと、激しく揺れていた土塊の人形が倒れて割れ、その中から人の男女が出てきたのだった。

 観衆のざわめきは、どよめきに変わった。
人といっても元の人形と同じほど、それこそ手のひらにのるほどの小人(こびと)なのである。小さな人間の男女は、この国の民と同じ髪型と衣を装っている。男は麻の筒袖を着て、裾を絞った袴をはき、女は長い髪を美しい髪飾りでまとめ上げ、麻の筒袖の裾が足首辺りまで長い服を着て、腰を綺麗な七色の編紐で縛り、宝石の首飾りを下げて、両方の耳元には金色の飾りが揺れており、よく見れば、形のよい唇には紅までさしているではないか。
 その小人達は無言で手などつなぎ、人と変わらぬ柔軟な動作で、敷かれた布上を、ゆっくりと歩き始めたのである・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 00:30 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用

2009年01月23日

きゃあ!!床入って・・、いわゆる濡れ場のことよね?!恥ずかしいわあ!!だけど、とても大切なことじゃあないか。じっくり、読んでね!!ドキドキしちゃうわあ・・。

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愛媛国縁起

布陣
        三
 須磨の鵯(ひよどり)に陣屋を構えた都祢那賀(つねなが)は郷主ではなく、あくまでも西方面攻略軍団の大将軍である。
今は兵馬を休めつつ、次の作戦を練り上げているに過ぎない。

(ちなみに郷上は汰伽野洲(たかやす)といい、都祢那賀の叔父にあたる人物で、この時期は昼夜を問わず道路工事に忙殺されていた。邪馬台国の都ともいうべき明日香野から葛城山麓を抜けて難波ノ津へ繋がる道へと、須磨からも延長せねばならないのである。こうした工事には生口{せいこう=奴婢=ぬひ、とも呼ばれた奴隷}が従事させられたという。また、鵯村千余戸とは兵士の数を含んでいない。郷とは、今にいう数ヶ村の集合単位である。)

 この若者が寝起きする陣屋は、いわゆる高床の建屋であり、そこからは鵯村が一望できる。周囲に建ち並ぶ兵舎や、村人や商人達が暮らす家などは竪穴の苫屋で、陣屋の高みから臨めば、彼の視界を妨げる物は天然のほかにない。屋敷は二十畝【一畝、約三十坪】、建地【建坪】三畝という、広大なものである。

 彼は伽の相手を在所の女に求めず、都から那薙姫を呼び寄せて過ごしていた。今宵も淫靡の限りを尽くし、乱れた夜具の上に寝そべったまま腕を伸ばし、一穂の灯がくゆる素焼皿を引き寄せた。
それを手に取って身体を起こし、夜具の上に胡座をかいて、灯をかざせば、微熱を帯びて淡い桃色に染まった滑らかな曲線が・・、那薙(なち)の裸体が横たわっている・・。
 彼女は、ぽってりと濡れた唇と、長いまつげに縁取られた目を半ば開き、酔っているような顔である。
都祢那賀は身体を移し、虚脱したように伸びた那薙の脚を割って座り直した。那薙は恍惚として、仰向けにされた蛙のように、自ら膝を曲げて白い股を開いた。
 その真白く細い脚の付根は柔らかく盛り上がり、淡い恥毛がけむっている。熟して剥けた果実にも似た陰部が灯に照らされ、ぼってりと潤って赤い。
 都祢那賀はそれを手のひらで揉み潰すようにしながら、最も敏感な部分を指先で摘んだ。
「あぁ」
 那薙は小さな声を上げ、彼の手の動きに合わせて切なげに腰をくねらせた。
「醜悪にして」
 と、時に言葉を区切るのも、都祢那賀が語り癖の一つである。
言葉を区切りつつ、親指の腹で、その部分を撫で上げては・・
「何と美しいものよ。まこと」
「あっ」
「神が、人を創りたもうたのであれば、これこそが証だ」
「さっ・・・様ぁ」
「まだ欲しいか」
 都祢那賀は、那薙の秘所を優しくまさぐることを止めない。
「あっあっ」
「なるほど、ここから人の生命の一露が入り、やがて人として生まれ出てくる。人をして人たらしめる場所としては・・」
「あぁっあっあっ」
「出来すぎておる。まさに森羅万象に通ずる理だな。神とは抜目のないものらしい」
 彼は、片手に灯を持ったままで那薙の体内に突き入り、彼女の白い腹の上でゆっくりと素焼皿を傾けた。皿の縁からたらたらと滴るのは蜜蝋である。
 那薙が喘ぎ、都祢那賀は、よく締まるわ、と笑った。
那薙にのしかかるようにして素焼皿を夜具の外の板間に戻し、二人は激しく動き、那薙は何度か気を失いかけたらしく、やがて互いに昇りつめて離れた。

 そして都祢那賀は、さも旨そうに盃を干しつつ、やっと彼女の名を呼んだ。
「那薙」
「・・はい」
 まだ、恍惚に酔うているらしい。
「お婆様は、どうだった」
 都祢那賀のいう、お婆様とは、那薙の祖母である卑弥呼のこと・・。
「どう・・・と申されますと」
「息災におわしたか」
「・・はい」
「うむ」
 彼は高々と盃を傾け、ことっ、と床に置いて酒壷を取り、なみなみと注いだ。酒は濁酒であり、白濁としている。
「都祢那賀様には、よしなに・・と」
 夜具に寝そべり、舌がもつれるような口調で応える那薙を見おろしながら、都祢那賀は炒豆を一つ摘んで口に放り込み、勢いよく噛み砕いてから盃を取り、酒を暫く眺めて何やら思案していたが、やがて眉を寄せて眼を細め、口許に運んだ。
「まだ好んで飲んでおるのか、生娘の血を」
「・・初潮のそれは格別とか。この須磨より送られた俘虜の女子を殊更にお喜びでした」
「鬼道とは、面倒なものだな。到底好きにはなれぬ」
「・・されど」
「んっ」
「その威は、はかり知れませぬ」
「我らが国とて夢幻やも知れぬものを・・所詮、長くは続かぬわ」
「国の事などは・・親魏倭王の金印のある限り安泰とか」
「金印だと」
 都祢那賀は呆れたような口調で
「そなたも正気で思うておるのか?たかが印一つで国が保てると。他国がなびくとや」
「それほど愚かではありませぬ。さりとて・・」
「何だ」
「鬼道が廃るとは思えませぬ」
「そなたが卑弥呼の血をひく巫女なれば」
 都祢那賀は那薙の腹に手を滑らせ、あわあわとした恥毛をまさぐり
「その心持ちも分からぬではない。だが」
 と、二本の指で那薙の濡れた内壁をかき回した。
「卑弥呼も死ぬ」
「もっ・・もう堪忍・・して」また、那薙が切なげに鳴き始めた。
「急がねばならぬ。急がねば」
「あっあっ」
 やがて、蜜蝋の灯が燃え尽きた・・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 11:03 | Comment(2) | 連載長編小説 当ブログ用