2010年06月03日

さても本日最終アップです、北新地の皆さん、また今夜の仕事が終わったら、チラッとチェックよろしくです。合掌

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北新地物語

「先生、あきません。抜いたら、ダメですよぉ」
「えっ?!」
 澪さんの袖のしつけ糸をつまみかけていた山猿は、れんさんの声に、ビタッ!と手をとめた。
「もう、会長さんも会長さんやけど、ふたぁりとも、ちゃんと、云うたげなアカンやないの」
「えっ、何ですかあ?!」
「はは、すんません、先生。その糸を抜くっちゅうことは、新しい着物を買うたるっていう約束なんですわ。それもね、そんなん知らんかってん、では済まされまへん。北新地では、もう絶対というてもええ、まあ、客と女の子ぉの、粋なルールってやつですわなあ」
「ええっ?そっ、そうやったんですかぁ」
 精一杯の笑みをうかべつつ、まさに背筋に冷や汗の流れる山猿なのである。

(アブナい、アブナいぃ、まったくぅ、このオッサン、どこまでが百やら分からへんがなぁ。もしも、れんさんが止めてくれなんだら、もう一巻の終わりやったでえ。たった糸クズ一本で、それこそトリコミ詐欺やらかした上で自己破産せんならんとこやったぁ。)

「そやけど、先生、どうですか、この子ぉら、先生がくると聞いたら着物を着付けて、わざわざ、しつけ糸まで付けてくる。まったく、男冥利につきる、っちゅうもんやないですか」
「いやぁ、なるほどぉ、ホンマにぃ、なかなか洒落た決め事ですねえ、さすが北新地やなあ、いや、まったく、恐れ入りましたぁ」
 などと云う山猿の、その声は半ば裏返って震えており、必死につくろう笑顔は、もう見るも哀れなほどに引きつっていた。

(なにが男ミョ〜リやねんっ、そら、お金持ちやったらできる道楽っちゅうもんやでえっ。ワイなんか、しつけ糸一本で首くくらんならんがなっ、ああ、おとろしやあ・・。)

「そやけど、先生、つぎは、きっと抜いてくださいね」
「わたしも、お願いしますぅ」
「澪ちゃんも、梓ちゃんも、何いうてんの。そんなん、わたしが先に抜いてもらうし、ねえ、先生」
「あははぁぁ、そらもう、頑張りますわぁ」

(抜くも抜かんもあるかい、こっちは、二度と北新地になんか戻ってこれん身ぃやぞおぉぉ、もう再会もでけへんのやでぇぇ・・。)

「ああ、この菅先生やったら、きっとそうなるっ。みんな、楽しみにしもて、精だして応援さしてもらいっ。ねえ、先生、これはホンマに、いままで僕が見込んだ男は、みな、ちゃあんと成ってますのや。僕の目ぇに狂いはおまへんっ、先生は必ずっ、すごい作家はんに成りまっせっ。しっかり、頑張っとくれやっしゃっ」
「はいっ、そらもう、今までも命懸けで書かしてもらいよりますし、これからも、死んだ気ぃで書かしてもらいますっ」
「ほんと、先生やったら、きっとそうならはるわ。ええ目ぇ、してはりますもん」
 さも真剣に云うてくれる、れんさんのかたわらに・・・
「失礼します」
 と黒服の兄ちゃんが片膝たてて、何やら小声でささやいた。それは、たとえば信長の本陣に馳せ参じた伝令将兵のようでもあり、コクン、と軽くうなずいた彼女なら、まるで濃姫を想わせるに充分なのである。
 はたして、れんさんは微笑もて、すっく、と立ち上がった。
「会長さん、先生、ちょっと失礼しますぅ、どうぞ、ごゆっくり」

(お濃っ、案ずるなっ、わしは必ず天下布武を成しとげてみしょうぞっ。そのあかつきには、いっそ北新地中の着物美人のしつけ糸を抜いてっ、抜いてっ、抜きまくってぇっ、それを結い合わせてこさえた鉢巻まいてなあっ、この街中をカンカン踊りしてまわったるでえぇぇぇっ。)

 いや、じっさい、動かざること山のごとし、とも云われおる山猿の、数少ない弱点のうちに最たる一つが、別嬪さんのオダテ、なのである。しかも、その別嬪さんが艶やかなる着物姿となれば・・

 ほな、これからチョモランマの頂上まで駆け上がって、ラジオ体操第一だけやなしに、第二もやってから戻ってきますわっ!!

くらいのことを本気で、出来るっ、と想ってしまうヤツなのである。だから、皆さん、これからは、もう怒ったりケナしたりするのはやめて、どうぞ、ガンガンおだててやっていただきたい。

 とて山猿は、眼前の酒を、ググウッ、と見事に飲み干した、ちょうどその時である。
「どうもぉ、オジャマしますぅ」
 またまた、しかし、着物ではなくして派手なドレスで着飾った別嬪さんが、いかにも若々しい勢いもて、れんさんの空けた席に座った。
「オオッ」
 それまで、何ものにも動じないふうの会長が、思わず声をあげたのも、この時である。
 この子、お顔もさることながら、そのスラリと放り出した脚が・・、おフランスかどっかで特別注文してあつらえはったんですかあぁっ、とでも云いたいくらいに、めっちゃめちゃ美しいのだった。
 しかも、いわゆる生足ってやつである。
「さっき、お姉さんから、会長さんの大好物やっ、て聞いて、トイレで脱いできたんですぅ」
 ごく当たり前げに、なんと嬉しいことを云う子であろう。

(ホンマかいぃぃっ、トイレっ、いまさっきトイレで脱いできたあぁぁ、なんちゅうおとろしい、いや、ナイスな子ぉやねやぁぁっ。)

 山猿の脳裏には、れんさんがそないにしてはる格好、澪さんがそないなことしてる姿、梓さんがそないしてる仕草、などが次々と、しかも鮮やかなる極彩色もて浮かんでは、なかなか消えないのである。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 22:33 | Comment(0) | 実録 華も実もある北新地物語

ことに月初めは、いろいろありまして、どうしてもアップがすすみませんこと、どうぞ、お許しくださいね。合掌

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北新地物語

 コラアッ!誰が憎みきれないロクデナシやねんっ!
ウシミツ刻になあ、お前の名前を貼ったワラ人形にクギ打ちつけてるオンナがどんだけおると思うてんねやっ!
このスケベ猿ぅっ!

 はい、はい、分かりました。
ほな、お待ちかねの公式いくわな・・。
「ホンマ、先生って雰囲気あって、ステキやわぁ」
 と、100%の御世辞を、しかし、ついつい・・・
「いやあ、そんなことないですってぇ」
 と山猿に云わせる梓さんはっ、てえと・・・

(千堂あきほ−推定年齢20)×(『紅蓮華』に出演してる秋吉久美子−推定年齢5)+『千年の恋 ひかる源氏物語』の常磐貴子

 で・・、だいたい想像はつくやろけど、これ以上は内緒。

「先生も、やっぱり・・、生足とかお好きなんですかぁ」
 なぁんてシナをつくっても、めっちゃさわやかな澪さんはぁ・・

『疵』に出演した時の藤谷美和子×若かりし頃の坂口良子

この答えにぃ、最盛期の叶和貴子を足して推定年齢−5したのち・・・・

 おお、おお、ほうか、ほうか。ホンマ、幸せなやっちゃのう、一生、好きに云うとけ、スケベ猿っ!
第一、そないに別嬪さんやったら、なんぼ北新地いうたかて、お前みたいなアホに、いつまでも御愛想したりするかいっ!ボケエッ!!

 うん、うん、よぉ分かった。
ほな、直接、ご本人さん方に聞いてみたろやないかい。
「そやけど、ホンマ、れんさんにしても、澪さんにしても、梓さんにしてもですよ。こないに別嬪さんやのに、たとえば芸能界デビューっ、とか思わないんですかぁ」
「もう、先生ったらぁ、ありがとうございます。そんなん、いっぺんも思うたことないですよ」
「あたしもやわぁ」
「わたしも。だって、北新地が好きやもん」
 最後は、それまで会長の横で、うずうず、頬笑んでいた、れんさんが、ビシイィィッ、とまとめ、澪さんと梓さんが、ネ〜、って感じで目を合わせつつ、うなずいたものであった・・、分かったかぁ。

「先生、このお酒が、すごく好きなんですってねぇ」
 これまた先んじて会長さんが、山猿の名前でキープしてくれはってた、オールドクロウ、という。
 かの松田優作さんが一生涯に愛飲したことでも知られるバーボンであり、云わでもながら山猿は、そのエピソードに食らいついて飲み始めたものであった。先のクラブ吉川さんでいただいてたのも、これである・・、ってことは云うまでもないか。

 したがって、この場の話題も、そうそれしかあるまい、っていうより、もともと、いっぱいいっぱいな山猿なのである。
「あのね、松田さん、御自分の主演映画のなかでも、わざわざ、この酒のためのワンシーン撮ってるくらいなんですよぉ。あの遊戯シリーズのなかでね、私は泣いています、のリリーさんがクラブ歌手の役で出てはって、ワンステージ終わってステージおりて、カウンターに座ってる優作さんの横に座ってね」
「はは、先生、例えが古いでんなあ。この子ぉら、きっと知りまへんで、なあ、澪ちゃん」
「まあ、松田優作なんて、めっちゃ有名ですやん、ちゃぁんと知ってますう。リリーさんかて、歌手と、女優もやってはりますよね」
「そうそう、ハスキーボイスの、お綺麗な方ですよね」

(そのとおりっ!せやけどな、澪ちゃんも梓ちゃんも、なぁんも心配せんかてええねんでぇ。ワイは、泣かしたりせえへんよってぇ。)

「あれっ?!澪ちゃん、なんや、着物の袖に付いてるでぇ・・、ああ、なんや、しつけ糸ちゃうかぁ。おっと、梓ちゃんもやんか。その着物、おろしたてかいな。しゃあけど、二人とも、しつけ糸くらい、とっとけよなあ、先生、すんまへんけど、その糸クズ、とったってくださいよ」
「えっ・・、あっ、そのっ、これですかぁ」
 なるほど、そう云われて、よくよく見たなら、着物の袖に、しつけ糸らしきものが縫いつけてあった。
 会長が、ここまで云うているかぎりには二人とも・・、なに触ってんのエッチィ、などとは云うはずもなかろう。
とて、山猿は満面の笑みを浮かべつつ、ソロリ、その指で糸クズをつまもうとした。
「ほな・・、失礼しますぅ」

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 19:21 | Comment(0) | 実録 華も実もある北新地物語

こちらも北新地屈指の超一流高級クラブ岩室さんです。はてさて、山猿め、いかなることをやらかしますのやら・・。合掌

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北新地物語

 じつは、初めて会長の御相伴にあずかった折りふし、山猿にも出題された・・、ようは心地よく酔い始めた会長の十八番なのである。クイズそのものの出来も、いい。
 が、上機嫌かつ真面目くさった大顔で・・
「まず、大根のソロホームランで野菜さんチームが一点とってん」
 などと身振り手振りも面白く語りゆく、その様子こそは、たとえば真打昇進披露の高座で一生懸命かつ大得意なる落語家の一席を見聞するほどの巧みなのである。

 もちろん北新地の皆さんのなかに、これを直に知っている方々も少なくあるまい。また、何より、まだ知りまへんよって今度やってちょうだいね、という方々のためにも、これ以上は秘密にしておこう。
 ちなみに、出題された時に山猿は、五回ほどくり返し聞いても、ついに正解できず、それを可笑しがりつつ会長が、とうとうヒントめいたことを大得意に云い添えたのち、ようやく回答できたものであった。

「え〜っ、また違うの〜、もう分からへん、何でぇ〜」
 二回ほど不正解を重ねた梓ちゃんのおかげで、ますます熱気は高まるばかり。してやったりぃ、とて会長さんもご満悦なのである。
「梓ちゃん、よ〜聞きやぁ、もう答えは云うてんねんでっ、ねえ」
 れんさんは、とっくに知り尽くしているらしく、うんっ、と勢いこんで相づち打つ澪さんの、笑みくずした美貌の愛らしさは、また格別であった。

(ええのう、ホンマ、極楽やあ。吉川さんも最高やったけど、この岩室さんも、また一味違う天国やがなぁ。ということはぁ・・、きっと次のお店も、その次も、それぞれ違うんやろなぁ。もう、こないなったら、ワイ、いったいぜんたい、どこで即身成仏したらええのか、ついつい迷うてしまうがなぁ、う〜ん、困ったのう・・。)

「何やあ、そうやったんかぁ、もう」
 さも口惜しそうに云う梓さんではある、が、しかし、三回めで正解したのであるから、あきらかに山猿より頭がいいではないか。
「わたしなんか、四回めで、ようやっと分かったんよ」
 そう云いながら、れんさんが笑った時、すでに山猿は土俵際であった。が、すかさず澪さんが、手をたたきながら云う。
「えへへ、わたしは一回で当てたもん、ねぇ、会長さん」
 のこったっ、のこったあっ、と土俵際でバタバタしている山猿に、もう容赦もない、ハリ倒し、が炸裂したのは、この時である。

(そら、ワイはアホやっ、なんせ芸のためやったら女房も泣かす男やっ、けどっ、いまにみてみいっ、ワイはっ、ワイはっ・・、もう一杯いだだこかしらん・・。)

「ほな、次やでえ、ええか、ほれ、よう見いや」
 会長さんも、ノリノリってやつである。その、だいぶ使い込んだグローブみたいにゴッツい左手を、大きく広げて見せている。
「これ、何指や」
「お父さん指ぃ?」
「そやな、ほな、これは?」
「お母さん指」
「さすが、よう知ってるなあ、ほな、これは?」
 と、それぞれ五本指の別称を問うては、大真面目に感心してみせるのである。だからといって・・・

 あぁ、よかった、会長さん、ちゃんと赤ちゃん指もあるんやな。

などと妙な安心は御無用、なんせ某大手企業の会長さんなのである。いや、もし、かりに、もしもっ、アチラの業界の方であったとしても、おそらく、この人なら・・、揃ったままに違いない。
「よっしゃ、ほな、これからやでっ、よう見いやっ」
 云いつつ会長は、その使い込んだグローブみたいな手を広げたまま、テーブルの上に置いた。
 だからといって、ついに、これから指を詰めようってワケじゃないことも、あえて云い添えておきたい。
「お父さん指、お母さん指、お兄さん指、お姉さん指、これは?」
「赤ちゃん指」
「そうそう、ここまではええな?」
 じっさい、これも山猿が初の御相伴の席で披露されたクイズであった。しかも山猿、なんべん聞いても、ついに分からずじまいで、ついに可笑しさをオーバーランしてしまったらしい会長が、ホンマにアホちゃうか、とでも云いたげな感じで答えを明かした時に、ようやく、なるほどぉ、と感嘆の溜息をついたものでもあった。
 ただ、いまだ見聞していない方々のために、あえて、これ以上は書かずにおきたい。いずれチャンスがめぐってきたなら、どうぞ、果敢にアタックして、大いに楽しみ、盛り上がってくださいね・・。

「あぁん、もう、わたし、ホンマに、アホやわあ」
 二回くりかえして聞いたのちに正解した梓さんは、いかにも参りましたあ、感じで照れ笑いしながら、ちょっと喉をうるおしている。
 その・・、そらもう超高級エステサロンでたった今お手入れしてきたとこですもん、とでも云うほかにない、いかにも柔らかくうねる白い喉を、チラッ、と見ながらも、どこ見つめてはんのん、イヤやわあ先生のスケベェ、などと、れんさんや澪さんや、とうの梓さんに想われては一生涯の不覚とて、さっと作務衣の襟なんぞ正しつつ、ちょっとオスマシさんなる山猿なのである。

(そないに口惜しがるなよ、梓さんっ、ワイの立つ瀬がのうなってまうやないかい・・、けど、ここは先に開き直ってバラしてたほうが、あとあと、ラクっちゅうもんやろなあ・・。)

「そんなぁ、梓さん、僕なんか、三回めで、ようやっと分かったんですからぁぁ」
 この大ウソつきヤロウ、なんて云わないでいただきたい。
なにせ、ここは、あこがれの北新地の真っ直中、いまだ見栄を捨てきれないでいる、だけど、ちょっぴり憎みきれないロクデナシなる山猿なのである・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 09:54 | Comment(0) | 実録 華も実もある北新地物語