2010年06月12日

ついに物語の舞台はユニバースさんへ突入っ、ますますヒートアップする山猿の勢いは、もう誰にもとめられないっ?!合掌

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北新地物語

(ホンマに、もう、なにがミリタリーデザインのユーズド仕様やねんっ。ちょっとオシャレやなあ、とか思うて買うたったばっかりか、あこがれの北新地への御共にと選んでやった恩も、あっさりと忘れやがって、これでもかあっ、ちゅうぐらいに手こずらせやがってっ、行く先々でエラい恥かかせてくれたなあっ。マジで菅さんて四国の山猿そのまんまやったわねえ・・、ホントにメッチャ田舎モン丸出しやったわよねえ・・、会長さんの手前があるから黙ってたけど、もう二度とゴメンやわあ・・、じつはウチもぉ・・。とかって、あとあと北新地中の笑いモンになるんはワイやけど、そら、ぜぇんぶ、お前のせいやからなあっ、おおっ、分かっとんのかっ、コラアァァァッ。それでも見捨てずに、こないして大事そうにオンブしてやっとるワイの有り難さを、よぉに考えてみい。ええか、子供でも親の背中みて育つんや。お前も、そろそろ聞き分けよぉにして、ええなっ、次いくユニバースさんでは、ええ子にせんならんのやでっ。ワイが名刺と思うたら、開けるチャックはここですよぉ、ワイが本をと思うたら、ここからすぐに出せまっせぇ、と素直に開けさすんやぞっ。ええなっ・・、おお、よしよし、分かったんか、ええ子や、ええ子や、ネンネしなあぁ。)

 もう、ええ加減くたびれてきたズタボロにしか見えないショルダーバッグを、ちょいと左肩であやしつつ、迷子になりゃしないかしら山猿ちゃん、とて時々にふり返ってくれる麗羅ママさんと、その先を知らん顔して、さっさと早足で歩いてゆく会長の背中を、いそいそと追いかける山猿なのだった。
「先生、ここですわ、足元の階段、気ぃつけとくなはれや」
「あっ、はいっ」
「くの字に曲がった入口が、なかなか面白いでっしゃろ」
「はあ、ホンマ、オシャレですねえ」
「会長さんと菅先生、ご到着よぉ」
 麗羅ママさんの歌うような声とともに、またまた黒服の兄ちゃんたちが一斉に、きょーつけぇっ、して出迎えてくれた。
待ちうけていた女の子たちも、いらっしゃいませえ、よ〜こそぉ、お荷物どうぞぉ、などと口々にさえずりながら、店のホールで自動演奏する電子ピアノの鍵盤の動きに気をとられていた山猿に、優しくまとわりついてくるのである。

(わ〜いっ、またまた新たな極楽やあ〜っ、ここの天女や観音さんも、こりゃまた、別嬪さんばっかしやがな〜っ、もう、どないでもしてちょうだいかあ〜っ、ワイの全部、あげるでえ〜っ。)

 ついさっきまでショルダーバッグに手こずったことなんか、いっぺんに忘れてしまった山猿が、いざ踏み込んだ店内は、たとえば贅沢のかぎりを尽くして上品なログハウスみたいな壁と、いっそう明るくやわらかな照明にかがやく、やはり浮世ばなれした別世界なのだった。
 こうした華やかさのなかで、麗羅ママさんの美貌は、かすむどころか、ますます艶めいて眩しく、いっそ着物姿の女神はん降臨、とでもいうほかにない神々しさすら漂わせている。

(あちゃあっ、これまたホンマモンやっ、これぞ北新地のホステスさんやあっ、どーですか、この、ド迫力っ、たまらんのうっ。)

「ほな、先生、まずは席についてから、落ち着いて、本とお名刺出しなはれ」
「こちらですぅ、どうぞぉ」
「はっ、ありがとうございますっ、御世話になりますっ、すんませんっ、失礼しますっ」
 奥の特等席に案内される通路ぎわにも、ズラリ並んで深々と一礼する黒服の兄ちゃんたちに、一々、精一杯のお愛想ふりまきながら、まるで赤ん坊をあやすかのようにショルダーバッグを抱えた山猿がゆく。

 それは、まるで花咲く森の道で熊さんにであったような気もしたし、森の木漏れ日を浴びて仲良く手をつないだヘンゼルとグレーテルになったような心地もしたし、アルプスの少女ハイジに会いにきた着物姿のクララさんのあとを、ちょっと恥ずかしそうに追いかけるペーターになった気分でもあったろう。

「先生、上座へどうぞ。付いてくれる女の子ぉが揃うたら、まずは乾杯しましょうや、ここがユニバースですわ、どうですか」
「どないも、こないも、そらもう最高ですねえ」
「先生、それ吉川でも岩室でも云うてはりましたでえ、どこまで最高ですねん」
 あはは、と笑う会長さんが、よりいっそう御機嫌さんなのはナゼなのか・・、その答えを知りたい方は、ぜひ読みつづけていただきたい。
すなわち、いわゆる乞う御期待なのである・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 17:57 | Comment(0) | 実録 華も実もある北新地物語

しつこくお断りしておきますが、この物語は完全なるフィクションであって、ふと実在の人物を連想されたとしても、あくまで架空の人に間違いありませんよっ。合掌

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北新地物語

「先生、じつは僕はね、この岩室ビルのエレベーターで送り迎えの女の子ぉと二人きりの時には、ディープキスしますねん」
 別嬪さんに囲まれて、ホワワァァン、と舞い上がっている山猿に、またもや会長が真面目な顔で云うている。
「はあ、そら、ええですねえ」
 とて、チラチラッと女の子たちを見ながら応じたものの・・・

 ホンマ、うらやましいなあぁぁ。

という一言だけは、かろうじて呑み込んだ山猿であった。だって、そうであろう。そんなこと口走ったなら、まるで、おねだりしてるみたいではないか。
 これホンマに美味しいですねえ・・、という本音が、だからお代わりちょーだいね、といういやしさに繋がりかねないことは、あし田さんにて、しっかり学習済みの山猿なのである。

「もう一階到着ですぅ、ホンマ、お名残惜しいわぁ」
 云いつつ、さっ、とエレベーターのドアを抑えたれんさんの手も、そらもうアンタ、思わず溜息が出るほどの美しさで山猿の目に染み込んだし、いわゆるオープンセットよろしく、いっそう華やかなるネオンの群に照らされた通りには、目いっぱい張り込んでますのやわあっ、とて着飾った天女はんと観音さんが、一張羅に違いない背広がちっとも似合わないけれど、お金やったらナンボでもあるねやでえっ、と云いたげなオッチャンたちを引き連れて忙しなく行き交っている。そんな、すでにホロ酔い気分の北新地には、ビシッ!と背筋を正して辺りを見渡しながらインカムをいじる黒服の兄ちゃんたちこそが、山猿の視界に映る画面を、ほどよい緊張感もて引き締めているのだった。

 はーい、照明、山猿さんにスポットォ、音声レベルOK、ほな、あこがれの北新地の夜景シーン27、本番いきまぁすっ!ん〜っアクションッ!!

「会長さん、菅先生、ホンマにありがとうございましたぁ。きっと、また来てくださいね」
「今度は歴史のお話とか、いっぱい聞かせてくださいね」
「いただいた御本、しっかり読ませていただきますぅ」
「はいっ、ホンマにありがとうございましたっ」
「みな、ちゃんと読書感想文を書いてなあ、先生に送るんやで」
「いやあ、そこまでしてもらわんでも、ええですよぉ。ちょっとでも楽しんでもらえたなら、それだけで嬉しいことですわ」
 感想文なんかよりラブレターのほうがええのやでぇ・・、などと云えるはずもない山猿には、じっさい、台本なんか渡されておらず、ようは1シーンごとをアドリブで切り抜けるしかないのである。

「あっ、冬子ママさんっ、どうもっ、ご無沙汰しておりますうっ」
「こちらこそ、今晩は来てくださるて聞いてたのに、おそなってしもてゴメンなさいねえ」
 岩下志麻さん、いや、冬子ママさん登場なんてシナリオのなかになかったんちゃいますかあ、会長さんっ!
「ママさん、こちらが菅先生ですわ、先生、ここのオーナーの冬子ママさんです」
 本と名刺、お渡ししときなはれ・・、と会長がささやいている。
「どっどうもっ、かかっ菅ですっ、初めましてえっ、今晩はすっかり御世話になりましたあっ」
 それこそ慌てまくりの山猿は、断じてホントのボロボロではないショルダーバッグを片手に、あし田さんにてヒモのとれてしまったチャックをさがそうとしたのだが、これが簡単には見つからない。

(んもうっ、またかいなっ、まだ怒ってんのか、お前、はよ機嫌なおして、すんなり本と名刺を出さしてくれよ。あぁいっ、どごが正解のチャックやねんっ、ホンマにもうっ。)

 もう、恥だの何だのと云うている場合ではない。
その場にしゃがみ込んだ山猿は、バッグを地面に放り出してはひっくり返したり、右やら左やらにまわしてみたり、目についたチャックを片っ端から開けては、ここ違うっ、これも違うっ、ほなここかなっ、やっぱり違うたあっ、ハハァン、これやろ・・、また違うんかいっ、とバタバタしまくったのち、チラリ、周囲の皆さんを見上げて、その半ば呆れたような様子には、さらに舞い上がってしまった。

「あはは、すみませぇん、なんや、もう、すっかり酔うてしもてぇ、いや、ホンマに最高のひと時やったもんやからぁぁ」
 精一杯にひきつった愛想笑いしながら、ようやく取り出した本と名刺を、どうにか受けとっていただいたのだった。
「まあ、ほんとにすみません、有り難く頂戴しますぅ」
 さすがに岩下志麻さん、もとい、冬子ママさんは如才なくして満面の笑みをくださり、さも大事そうにして一礼してくれた。
その間、北新地のアスファルトの上に転がしっぱなしのショルダーバッグを・・・

 お前なあっ、みんなが見てなかったらけっ飛ばすとこやぞぉっ。

と睨みすえてから、しかし、さも何ごともなかったかのように拾い上げてやった山猿であった。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 11:38 | Comment(0) | 実録 華も実もある北新地物語