2010年06月19日

いざ、クラブ二ノ丸さんへの道ゆきです。合掌

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北新地物語

「先生、あの古刹さんで、冬至の日いうたら、何してはります?雅華ちゃんは、その日、そこにおったっちゅうことですわなあ」
「ははあ、あっこで毎年の冬至っちゅうたら、水行してますわ。真冬の石鎚山から流れくだる清流に、どっぷり浸かって拝む、っちゅうめっちゃ厳しい修行ですねえ・・、ええっ?!ほな、雅華さん、まさか・・、水行しはったんですか?」
「はい、しっかりと川に浸かってきましたよ。第一、その修行するための申し込み受けつけは、先生がやってくれはったのにぃ」
 いや、じっさい、山猿は、そういった行事のときには手伝いにあがっており、確かに受けつけを任されていたのであった。
「この北新地から、はるばる石鎚山の山懐に登ってでっせ、おんなじ日ぃの、おんなじ時に、おんなじ水に浸かってたモンどうしが、いま、こうして北新地で同席してるやなんて、こら、もう、信じがたいほどに有り難い御縁っちゅうもんでっしゃろ」
「はあ、なんとも、まあ、ビックリしましたあっ」

 まあはあ、お前様、それ以上は伸びようもないほどに鼻の下伸ばして浮かれっぱなしやから、うちのことも忘れてしもうたんでしょう。もう、こらえられんでねえ、覚悟してちょう。

 待てっ、まあ、待ってちょうよ、お寧ぇ、わしゃ、お前のことは、夢にも忘れとりゃせんでよう。ほれ、機嫌なおしてちょうよ。

「ほな、先生、そろそろ二ノ丸へいきましょ。今晩のアフターはねえ、この雅華ちゃんがつき合うてくれますよって」
「あっ、はあ、一つ宜しくお願いしますぅ」
「先生、わたしからのお土産、マンゴージュースですけど、どうぞ、持って帰ってください」
 勝利の女神であらしゃる麗羅ママさんが微笑みながら渡してくれるお土産を、さも自然に受けとった寧々、もとい、雅華さんは、お先にどうぞ、ってな感じで山猿をうながしている。
「どうもっ、有り難うございましたあっ」
 ズラリ、見送りとて勢揃いした黒服の兄ちゃんたちとユニバースの女性方々に頭をさげつつ、出入り口へと向かう山猿の歩みをとめたのは、立ち止まってふり返った会長であった。
「先生、こいつが噂の内藤ですわ。内藤君、菅先生やで」
「どうも、本日は御来店ありがとうございましたぁ」
 そう云って深々と一礼した内藤君は、けっしてイケメンとかいう男前ではない。が、どっか憎めない愛嬌に満ちあふれており、ようは好感度抜群って感じの黒服の兄ちゃんであった。
「どうも、菅です。いや、なんや会長さんが、あなたのことを褒めてはったから、ホンマ、お会いできて嬉しいです」
「先生、こいつ、ほんまにアホでっせ、なあ、内藤」
「はあ、まあ、いろいろやらかしてますが、どうぞ、先生、また宜しくお願いします」
「こちらこそ、お願い申し上げます」
 云いつつ、くの字に曲がった通路を出て、トントンと低い階段をあがり、ますます妖艶なる輝きを放つネオンの群を、さも眩しげに見上げる山猿のかたわらには、いかにもお馴染みですぅ、といった風情で雅華さんが寄り添ってくれた。
「有り難うございました」
「どうぞ、お気をつけてぇ」
「また、お待ちしてますからね、先生」
 などと見送ってくれる麗羅ママさんや亜弥さんや雪絵さんを、何度も名残惜しそうにふり返りながら、いざ向かうは二ノ丸であった。

「ホンマに、もう、会長さんたら、足がはやいんやからあぁ。先生、どないですか?お初の北新地の感想は」
「はあ、そら、もう、最高すぎて、何がなんだか、さっぱりですわ」
「このビルです、どうぞ。エレベーターで・・、って会長さん」
 エレベーターの到着を待ちきれないらしい会長は、さっさと横の階段をあがってゆくのである。
「もう、しゃあないなあ。先生、階段でいきましょか?」
「えっ、あっ、はいっ」
「ほな、どっこいしょ、もう、荷物も重たいのに、会長さんたらぁ」
「あっ、持ちましょう」
「だいじょうぶですよ、このくらい」
 ただでさえ早足を、二段とばしでノッシノッシと上がってゆく会長のあとを、仲睦まじく追いかける山猿と雅華さんなのである。
いざ向かう先が二ノ丸であるなら、この階段が、すなわち大手道に違いなく、折り返す踊り場が、いわゆる馬止め、もしくは曲輪とでも想うていい。しかも、一緒にあがっているのが寧々さんなら、ここは大坂城か、あるいは伏見城なのか・・、山猿の想像は果てしなく膨らんでゆくのだった。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 15:30 | Comment(1) | 実録 華も実もある北新地物語