2008年11月28日

邪馬台国近隣の風景・・当時の狩猟民たちの暮らしぶりに教えてもらおう!!

ninki-blog-ranking-imgにほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へビジネスブログランキング
↑ブログランキングに参加しています。3つともクリックしていただけると元気100倍です揺れるハート

愛媛国縁起


遠海(えんかい)
     一
 屋敷の内のうっそうとした森の木々のいずこかで寒蝉【かんのせみ=初秋の蝉】が鳴いている。
「お山は、そろそろ紅葉がきれいな季節じゃ。獲物も、たんとおりまするぞ」
 幼い都祢那賀(つねなが)に向かって嬉しげに云う覇津華雅(はつかが)に、かたわらの殊里(しゅり)が問うている。
「親父殿、狩猟(かりくら)となれば、いかなる備えをすればよろしいのですか」
「これとゆうては何もいらぬ。明朝、そうじゃのう、夜明け前には出仕せよ」

翌朝、三騎の馬が連なって朝日を背にうけつつ、水田を仕切る狭い畦道(あぜみち)を駆け抜けていった。
この三騎が、ひたすらに目指すは葛城山である。
畿内には低くなだらかな山が多い。広大な平野の遥か四方を低山に囲まれているあたり、ゆるやかに巨大な盆地にも見える。
そんな風景の中に在って葛城山は峻険と云っていい山で、現在【天平時代】に云う竹之内街道の祖道が、難波ノ津まで抜けており、この道以外に大軍勢での行軍はできまい。

 したがって邪馬台国隆盛当時には、都である明日香野防衛上における西の要所、ようは天然の巨岩防壁とも云っていいものであった。また、この辺りの山には、太古よりの伝統をかたくなに守って棲み続ける狩猟民がいる・・。
 あるいは、険しい山深くに暮らす者達にとって、時代の移り変わりなどは何の影響力も持てないのかも知れない。この山岳民族が厳守する伝統の一つには、家を建てない。
山の急斜面に洞穴を掘って住屋としているのである。
農耕が盛んになってなお、狩猟と採集生活を捨てていないし、彼らにとっては下界の戦乱など余所事であり、はたして邪馬台国の権威なども知らぬこと、及ばずにいるのであろう。
ただし、狩猟を好む覇津華雅にとっては旧知の者達であり、都祢那賀と殊里をともなって向かう先は彼らの村であった。

 本道は、馬二頭立ての駕篭車(かごぐるま)が、すれ違えるほどに広い。が、山奥の村にゆくには峠の手前で脇道に入り、昼でも暗い巨杉の原始林を縫うように走ってから、さらに険しい山道を進むのである。その山道もついに途切れ、いわゆる獣道を迷わずに行ければ最初の村に到達できる。彼らは団結してはいるが集落を好まず、この山脈に点在して暮らしているのだった。
 狩猟する動物や、採集する木ノ実や山菜などが絶えるのを防ぐ祖先の智恵であるらしい。
 覇津華雅達は馬を降りずに幾つかの村を駆け抜け、ようよう日暮れ近くに、やっと首長である老人が暮らす洞窟村に入った・・、と奇古書にはある。移動にほぼ一日を要したのは、険しい山道に慣れぬ都祢那賀と殊里のせいであろう・・。
「わりゃあ、久しぶりやな」
 低く、しわがれた声で出迎えたのは長老の蛙毘寄(あびき)であった。
「おう。うぬも生きておったかや」
 覇津華雅は破顔一笑、さっ、と素早く馬から飛び降りた。
周囲には村人達が、ぞろぞろと集まっている。
みな、覇津華雅の来訪が嬉しいらしく、親しげな笑顔を満面に浮かべていた。
この山岳の村人達、まず、頭が大きい。ろくに洗っていないであろう髪は女でもぼさぼさで、男どもは髭面、その日焼けして垢じみた顔は脂ぎっており、よく張った顎がいかにも頑強そうである。分厚い唇からこぼれる歯は、獣の牙のような純白であった。
「泥を素手でこね上げただけの、しかも焼きそこねた笑み土面(どめん)のような面構(つらがまえ)でした」
 とは後日、屋敷に帰ってから宵襠(よいまち)に語って聞かせた、都祢那賀の言ノ葉である。
 宮中などで当たり前に見かける人形【ひとかた=現在でいう埴輪(はにわ)の原型】とは違う、と云っているのである。
「手足は丸太のようで、毛だらけで、着ている衣(ころも)と変わらない」
 とも云っている。宵襠は床をたたいて笑いころげたが、まあ、このあたりは後の話・・。
 まさに今、都祢那賀は馬上、しゃんと胸を張り、何やら怒ったようにぷっと頬を膨らませ、熊毛皮をまとった山奥の村人達を見おろしているのである・・。

ninki-blog-ranking-imgにほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へビジネスブログランキング
↑ブログランキングに参加しています。3つともクリックしていただけると元気100倍です揺れるハート
posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 10:12 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/23506656
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック