2008年11月29日

弥生時代にも狩猟民族はいたんだぜ!!えっ?!本当なの?!これを読めば分かるよ!!

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愛媛国縁起

遠海(えんかい)
     二
「これなるは、わしの御大将様におわします都祢那賀(つねなが)様じゃ」
 覇津華雅(はつかが)は、ひときわ野太い大声で紹介した。
その声は、山間に四度ばかりこだました。
殊里(しゅり)は、すでに下馬してひかえている。
こうした何気ない所作も、殊里の聡いところであったろう。
村人達は皆、馬上凛々たる都祢那賀を自然と仰ぎ見るかっこうになっていた。

「われ【覇津華雅】の大将なら、わしも立てたろやないけ」
 と、蛙毘寄(あびき)が、眼を据えて云う。
すると皆、うずうずと身体を動かし、都祢那賀に向かって地べたに平伏した。彼らは、この山に太古から棲み続ける者達である。
そこへ、西から大軍を率いてやってきた嘉汰耶(かたや)が、いわば勝手に山麓を荒し回り、彼ら先住民の聞いた事もない国を興して女王をたて、ぬけぬけと・・
「さあ、拝め。拝まねば攻め殺すぞ」
 などとぬかしやがってけつかる・・。
「ここは先祖代々、わしらの土地ぞ。くるならこいや」
 というのが、彼らの本音であった。

 しかし、覇津華雅だけは別格であるらしい。
その別格が仕えている者なら、やはり別格なのであろう。
それにしても地べたに額を擦りつけてまでの平伏とは、どうしたものか。太古よりの営みに頑なな者達ならではの、けなげなまでの純朴、とでも解すしかあるまい・・。

 ただ、そんな村人達の最も後ろで、突っ立ったままでがっしりと腕組みし、咬みつけば骨まで砕きそうなほどに歯をくいしばって、馬上の都祢那賀を睨み上げる男がいた。
よく張っていかにも強靭そうな顎がさらに骨張り、ぎょろりと剥いた目が血走っている。それに気付いた都祢那賀は、つと手綱を引いて馬の前脚を高々と上げて輪乗りし、平伏した人垣の隙間を縫うように三度ばかりで飛び越え、男の背後にまわり込んでは戛戛(かっかっ)と足踏みしたのである。

覇津華雅と長老が同時に
「あっ」
 と叫び、男が腰の短刀の柄に手をかけた時、都祢那賀は
「きゃっ」
 と甲高く笑った。男が思わず、えっ、と云うような顔をした次の瞬間、都祢那賀は破顔したまま・・
「納豆などは、馬ほどに食らうのか」
 と、男に問うた。
「えっ」
 つい、声に出た。頑強の者とて、こうした不意の問いには面食らうであろう。
「うぬ、阿呆か」
 これは、日頃の都祢那賀の口癖である。
彼の言葉は、たいていが唐突であり、しかも短い。その意味を察せられぬ者が、彼には阿呆にしか見えないものらしい。

 しかし、である。そう云われた男も、気むつかしいのが態度に出ているし、ましてや馬上でえらそうなのは、まだまだ年端もゆかぬ子供ではないか、なぶられてたまるかよ・・。
「なんやとぉ。わりゃあ、誰にもの云うとるんじゃい」
「遠海、やめいや」
 蛙毘寄が、この険悪きわまる空気の仲裁に入ろうとした。
「すっこんどれ、親父」
 と怒号した男の名を遠海、どうやら蛙毘寄の息子らしい。
遠海は、眼前の馬に飛びつくようにして、都祢那賀の手から手綱を奪おうとした。都祢那賀は素早く輪乗りして避け、笑顔をくずさず「変わった名だな」
 と、云うのである。
高貴の家に生まれた都祢那賀にすれば、これは、あるいは平常の物腰だったのかも知れぬ。が、村の長老の実子とはいえ土着猟師の家に生まれ育った遠海は、この時すでに二十歳。もはや、なぶっているとしか思えまい。
はたして遠海は、顔面血膨れるほどに激怒した。
「おんどりゃあ、何様のつもりじゃい。口のきき方、その身体に教えたらあ」
 ついに短刀を抜き放った。青銅の両刃直剣で、ただ、剣先が欠損しているのが哀しい。
「けけっ」
 都祢那賀は妙な笑い声を発し、遠海の真正面に馬を寄せたと思いきや、突然に、その生まれつきに甲高い怒声を張り上げたものである。
「しょせんは猟師の性根か」
「なっ・・なんやとお」
「皆が平伏した中でただ一人、俺を睨み上げておったろうが。少しは気骨のある者かと思うたに、手にした剣そのままの性根とは、笑止の上にも肚が立つわ。蹴飛ばしてやる」

(ほうほう。これはどうして、なかなかの喧嘩上手じゃわい。子供戦とはいえ、さすがは常勝大将様じゃのう。)
これは覇津華雅、胸中にての感嘆であろう。
「おう。こいや」
 遠海が叫び、都祢那賀が手綱をさばいて高々と、馬の前脚をあげた時で ある。その間に飛び込んだ覇津華雅は無言、拳を固めるや遠海を殴り飛ばしたのだった。
遠海は五尺ほども宙を飛び、背中から落ちて、暫時、息ができないほどであった、という。
「遠海、ぬしゃあ御父上の口上を聞かいでか。いったい誰に向かいての雑言と思うてか」
 戦場にて百戦錬磨の大将帥の怒号一喝であった。
さすがの遠海も、荒肝を潰したらしい。

都祢那賀と殊里も
「あれには金玉が縮んだな」
「御意」
 などと、後にひそめき合っている。

 しかし、この場の都祢那賀は違った。地べたにのびた遠海の側に馬を進め、真顔で睨み据えながら「答えよ」と云うのである。
遠海は顔をしかめたまま、呻く事もままならない。
すると、そこへ殊里が駆け寄った。
「遠海殿、まずは息を入れなされ」
 と云いつつひざまづき、自らの腰の竹筒を取って栓を抜き、遠海の頭を抱え起こしながら・・
「水です」
 と微笑した。
遠海は少しむせながら、それでも一口二口、己の口内に滲む血とともに飲み下した。これで、この喧嘩は、ついに遠海の完敗であったろう。
「若様の先だっての問いは、遠海殿の立派な体格を誉めたものです。何を食せば、かようにがっちりとした身体ができるのか、と問うたのです」
「ほう」
 覇津華雅は、殊里にも驚いた。
「殊里よ、若様の胸中が読めるかや」
「読めませぬ。が、言葉に発していただけば些かながら、それを察する事はできまする」
「・・・・山獣の肉じゃわい」
 遠海は、やっと、ぽつりと呟いた。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 07:59 | Comment(0) | 連載長編小説 当ブログ用
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