2008年11月30日

猿と蟹とがケンカして・・

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 まずは・・・
「猿じゃ」
 なんぞと一口に云うてものーえ、そりゃあ、もう昔から
「猿でも十匹十色じゃけんのもし」
 と云われておるくらいで、この広い地球上には、それこそ世界各地に、いろいろの猿がおりまさい。
 ああ、先に断っときますけんどのもし・・
「人類は猿から進化したんぞよ」
 やか云うて、まるで猿を人のデキソコナイみたいに想うとる者らもおりますけんど、そら猿に失礼ちゅうもんですけん。

 まあ、猿の立場で考えてみたら・・、二百年近うも、そななこと云われ続けとうみや・・、あんたぁ、そりゃ、なんぼ猿でも・・
「ひょっとしたら、そうかも知れへんなあ」
 と思うてしもたんとちがいますかしらん・・。
近ごろの猿どもときたら、たしかに人間よりはバカみたいにも見えますけん。ほやけんどねえ、あんた、猿も人とおんなじで、昔の猿は、そら賢かったんぞのもし・・。
ちゃあんと歴史に名を残した有名どころでは、たとえば孫悟空(そんごくうう)なんか、こりゃ大御所と云うても、よかろと思いまさい。なんというても仏教では忘れられん、かの三蔵法師(さんぞうほうし)さんの御共してのもし・・、あんたぁ、中国と天竺(てんじく)を渡り歩いた偉い猿ですけんねえ・・。
その子孫のうちでも天竺に住みついたやつらなんかは、今でも
「猿は、神さんぞよ」
 やか云われて、そりゃあ大事にされとるらしいんですけんねえ。
ほやけんどの・・、おんなじ子孫のうちでも中国に住みついたやつらは、こりゃ可哀想なかったらしいわね。
「猿は、人の病気に効く漢方薬あるね」
 やか云われての、なんと、脳ミソを食われたもんでさい。
ほんでも、まあ、まがりなりにも、これ大変に有り難がられたことには違いないんですけん、やっぱり・・
「さすがは孫悟空の子孫じゃのう」
 ちゅうて誉めてやらないかんわいのもし・・。

 さてさてじゃ・・、ところ変わって日本のお猿さん、これは、どななもんだろぞ・・。先に云うときますけんどのもし、昔から日本猿っちゅうて云うだけあって、これは孫悟空の子孫とは違うんぞよ。ほやけんのーえ、ほうじゃのもし・・、誰でも知っとる日本猿の有名どころちゅうたら・・、ほうじゃ・・、あの猿蟹合戦の猿ですけん。ありゃりゃあ、ほやけんど、こりゃ、こりゃ、ちょっと肩身の狭い思いをせんならんぞのもし・・。
 人のええ、いや、蟹のええ蟹から美味い握り飯をだまし取って食うてしもうたばかりか、それで苦情を云うた蟹に、なんと暴行まで加えたっちゅうんですけんねえ、これはいかんぞよ・・。
 まあ、やられた蟹のほうも泣き寝入りはせんとのーえ、臼やら栗やら蜂やらと・・、大勢を雇うて仕返ししたらしいですけんど、どっちにしても、これが面白可笑しいに昔話になって後世に語り継がれたもんですけん、まあ悪役になってしもうた猿の子孫らは、そらツライめぇしたらしいわね・・。

 たとえば、小田原のあたりに住みついたもんは、代々が籠屋をやって家族を養うとりまさい。それも、いっつも小田原提灯をぶら下げとったらしいですけん、もう昼も夜もなしに働きとおしとったんだろぞい。まあ、あんたぁ、唄じゃったらの・・
「ホーイホイホイ、ホイサッサ」
 やか云うて、さも威勢もように軽げぇに唄われますけんど、籠屋ちゅうたら楽な商売やない、そら大変な重労働なんですけんねえ。重たい籠を担いで夜中まで走りまわるうちには、可哀想に、すっかり脚も腰も曲がってしもうて、座っても背中丸めなあかんほどに疲れきってしもとりまさい・・。

 また、なかには
「猿まわし」
 たら云うて、人間に、首輪やら腰ひもで括られてしもてなあ・・芸人、いや、芸猿として身を立てようとするもんも出とりますけん。この末裔は、今でこそスターなみにテレビやか出ますし、ちょうど、これから年末じゃの正月じゃのには、引っ張りダコ・・、いや、引っ張りザルになりますけんどのもし・・、芸の道、これも、あんたぁ・・、ほんまに辛いもんですけんねえ。
人に教えられたとおりにやっとるのに・・
「反省」
 やか云われて、それでも素直に反省しとるのを、これまた人に嘲笑われて、あげくには・・
「反省やったら猿でもでけるでえ」
 やなんてバカにされる日々なんですけん。
それでも逃げることも許されんとからに・・、毎日の辛い仕込みに耐えるしかないんですけんねえ。ほんまに、つらいこっちゃ。
ほんで、ようよう一匹前の芸を覚えて舞台の華を咲かしても、あんた、ギャラはせいぜいバナナ一本か二本ですわ。
これでは、とうてい妻子を食わせてはいけませんけんねえ・・。

 ほんでも芸猿のなかには性根の座ったやつもおってねえ、夜ごと「芸のためやったら女房も泣かすでえ。なんや小春ぅ、その辛気くさい顔はぁ。文句言う前に酒や!酒や!酒買うてこい!」
 て暴れるもんも仰山おります。酒を買うというても、あんたぁ、そこは酒屋も生業やし、バナナ一本では売ってくれません。
可哀想なんは嫁はん・・、ちゅうあたりは、やっぱし人間と変わわんわね。母猿は、幼い子ぉを抱きかかえてねえ、震えもてでも、じいっと堪えるしか知りませんのですけん、そら可哀想なもんぞね。

 そんな猿を見ながら、蟹の子孫どもは・・
「どや?辛いカニ?御先祖様の罰じゃガニ」
 なんぞと拍手、いや、ハサミを鳴らして嘲笑いころげ、ついには嘲笑いすぎてねえ、口から泡ふくようになってしもうたほどでさい。この蟹どもはのもし・・・
「美味いカニ?なんぼでも食うて精つけて、もっと猿どもを泣かしたってくれんカニィ」
 ちゅうて人間を喜ばしよりまさい。そりゃあ蟹は美味いですけんどねえ・・、ほやけんど、あんたぁ・・、なんぼ子沢山やからと云うても、自分らの子孫まで食わして人を雇うのは、どななもんだろぞ。と、うちは思いよりますけん、あんまり蟹は食べたない・・。

 まあ、だいたいの人間は蟹が大好きで、煮たり焼いたり刺身にしたり、しゃぶしゃぶで食う贅沢者もおれば、甲羅に酒ついで・・「蟹酒じゃガニ、美味いガニ」
 と喜ぶ者までおりまさい。そうして美味い蟹を、たらふく食うては、精だして猿をこき使い、それを観て拍手しよるんですけん・・。

 この日本猿にゃあ、昔から、言葉の暴力もありまさい・・。
猿の浅知恵、猿芝居なんぞと悪口も考えだして言いたい放題、あげくは猿股じゃのいうて、なんと股引ちゅう、こりゃ褌代わりの下着にまでしてしまう始末ですけんねえ・・。
ほんでも日本猿は・・
「見ザル、云わザル、聞かザル」
 と腹をくくって、じっと辛抱しとったんじゃけん、そろそろ見上げたらないかんわね。なんぼ先祖からの因果応報とはいうたての、そら、ストレスもたまりまさい。たまには温泉にも浸かって、顔だけやなしに、尻までもが真っ赤になるほどの猿酒でも呑まにゃあ、やりきれんかったんじゃ・・、と、うちは思いよりますけん。

 こりゃ、ほんまの話ぞね・・
こなな苦労しよる日本猿を哀れに思し召した神さんと仏さんはのーえ、日本猿どもに山奥の温泉を紹介したったり、ついでに頬袋ちゅうもんをこさえてやって、いつでも自分の口ん中で酒を醸すことがでけるようにしたったんじゃけんのもし・・。
まあ、これで、すっかりアル中になってしもた・・、という噂もありますけんどが、・・いっつも猿の顔や尻が赤なってるんは、ありゃあ、酒灼けだろか・・?

 まあ、とにかく神さんや仏さんは平等公平ですけん、蟹には・・「先祖の仕返しは、もう充分やないカニ?仲間や子孫まで人に食わすんは、こりゃヤリ過ぎちゅうもんや!ええ加減にしとかんカニ!」
 と、それは大層な剣幕で叱ったちゅう。
神さん仏さんに叱られて・・
「堪忍しとくれやす」
 と改心した蟹は、それまでの所業を恥じてねえ、まっすぐに堂々と歩くことをやめてしもうてカサコソと横歩きするようになり、いっつも地に這いつくばって土下座、いや、平身低頭しとりまさいねえ。そんな蟹のなかには・・
「今までの悪行三昧を思い出すにつけ、このまま世間に身をさらすことはでけん。わたしは、深い海の底で静かに暮らす、そんなカニになりたい」
 と、それはそれは深い海の底に姿を隠したもんもおりますあたりは、日本国の偉いさんらにも、ぜひ見習うてほしいところじゃ、とも、うちは思いよりますけん・・。

 いっぽうの日本猿、こいつらも、なかなかに大したもんでさい。
芸をきわめて人を和ますもんも大勢おりますしな、母猿が子猿を大切に抱きかかえて必死に育てとる姿をみて感動せんようなやつは、こりゃ人でなしじゃ。ほんでのもし・・
とうとう、あんたぁ・・、猿飛佐助やら豊臣秀吉じゃの・・、立派に歴史に名を残す猿も出てくるまでになったんぞなもし・・。

 えっ?
ええ加減なこと云い過ぎやて?
いや、過ぎたるは及ばザルがごとし、でさい。
ほな、失礼しますけん、・・サルものは追わんといて下さいね。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 11:40 | Comment(0) | 仏教童話 当ブログ用
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