2010年06月13日

昨日は西条で飲みました、案の定、ひどい二日酔いでした。あの大阪で迎えた朝の清々しさは、もう二度と味わえないのでしょうか。合掌

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北新地物語

 いくら四国の山猿とて、少しは落ち着いてショルダーバッグをいじったなら、一つだけヒモの無いチャックをさがすのは大した苦労でもなく、しかも仕込んできた本が減っている分だけ、心の負担も軽くなっている。
 さらに杯を重ねた酒のせいでもあろう、ずいぶんと気が大きくなりつつある山猿なら、本を受けとっていただだき、名刺交換などしたとたんに、さも慣れた手つきで千春ママさんから頂戴した龍馬扇を使いこなし、ハタハタ、自らをあおぐうちに気分は、ふたたび高杉晋作君なのである。
「ほな、会長さん、菅先生、カンパ〜イ」
「先生、あらためて、北新地屈指の美貌を誇る麗羅ママと、こっちが亜弥ちゃんですわ」
「どぉも、初めましてぇ、菅先生、御世話になりますぅ」
 しっとりとした金色に輝くドレスに身を包み、さらに漆黒に薄いカーデガン【女性の服の正式名称など分からないんです】をフワリと着こなした亜弥さんと軽くグラスを合わせ、すかさず麗羅ママさんとも乾杯した刹那には、なぜだか作務衣を着たマイケル・コルレオーネに成りきっている山猿でもあった。

「先生、どうですか、北新地。たしか最初は吉川さん、つぎに岩室さんとお聞きしましたけど、二軒とも新地に名だたるクラブですから、すっかり北新地の夜を満喫してはるんちゃいますのん」
「そらもう、最高ですねえ。いや、ホンマ、ここもまた雰囲気が違うて、まさに極楽巡礼ツアーですぅ」
「そういや、先生、じつはねえ、さっきお会いした岩室の冬子ママさんて、昔、僕の叔父貴と恋人どうしやったそうですわ。いや、さすがにママさん御本人から聞いたんやのうて、吉川に古株の黒服から仕入れたことですけど、まあ間違いない情報ですわなあ」
 先に提示した公式によって求められた答えに、『激動の1750日』に出演している岡田茉莉子−推定年齢52したような麗羅ママさんのとなりで、えらく饒舌になった会長なのである。

(おっとっとぉ、なんぼアルコール控えめの自己流カクテルっちゅうても、そろそろ酔うてきよったな。そやけど、ますます『仁義なき戦い』に出てはるような雰囲気も増してきて、知り合いやなかったら、このオッサンには近づかんとこっ、ちゅう感じやのう、しかしぃ・・。)

「まあ、先生、麗羅ママの云うとおり、ちょっとは夜の北新地にも慣れてきたんちゃいますか?けど、まだまだ、これからでっせ」
「はいっ、もう成仏覚悟の死んだ気ぃですけんっ」
 つい故郷の方言を出してしまった山猿ではある、が、これがいけなかったらしい。その眼鏡の奥で、会長の眼が鈍く光った。
「その意気ですわ、先生、まずは今晩のアフターまで、きっちり、つき合うとくなはれや」

 遅い帰りをかれこれ言わぬ 女房の笑顔の気味悪さ

と、お気に入りらしい都々逸を口ずさみ、さらに会長は眼を据えた。
「僕も、腹は括っとりますよって・・、頼んまっせぇ」
「そらもうっ、極楽の果てまででも御共さしてもらいますっ」
「あっ、すみませぇん、ちょっと失礼しますぅ。雪絵ちゃん、宜しくね」
「はい、会長さん、菅先生、今晩は、雪絵です」
 会長の都々逸に合わせて舞いを舞うように席を立った麗羅ママさんのあとには、これまた黒っぽい着物をビシイッ!と着付けた雪絵さんが座り、いかにも慣れた手つきで軽く乾杯などをした。
 云うまでもなく、広い店内は満席である。むしろ、これまでの店より多いのではないか、と思われる黒服の兄ちゃんたちが、まったく映画で観るボディーガードそのままに直立不動、あるいは忙しくインカムをいじりながら移動し、そのあいだを蝶々みたいにヒラヒラと行き交う天女さんと観音さんたちなら、きわめて厳しい山猿監督にすらダメ出しするスキもあたえずして、もう撮影も絶好調なのである。

「なあ、亜弥ちゃん、今日は、旭菜ママは忙しいんかなあ」
「優ママさんは、いまちょっと・・、けど、必ず御挨拶にきますって云うてはりましたよ」
「ほうか、先生、麗羅ママもそうやけど、ここでは是非とも旭菜優ママを紹介さしてもらいたんですわ。じつは僕はねえ、旭菜ママこそが北新地で一番というてもええほど、惚れてますねん」
「はあ、そうなんですかぁ」

(ついさっきの岩室さんでは、れんさん最高って云うてたやなかですかぁ。ワイが連れてきてもろた店ことごとく、最高ですうっ、て云うてんのと、どっちがどうやねん。ばってん、ホンマに、もう、どこまで正気なんか、ワケ分からんオッサンやでぇ、しかしぃ・・。)

「ああ、せや、せや、先生、この店の黒服にね、内藤っちゅう若いモンがおりますねんけど、コイツがまた、底抜けのアホでオモロいヤツですねん」
 と云いながら、グラスを置いた会長は、キョロッキョロッと店内あちこちを見渡していたが、やがて、またグラスを手にした。
「ちょっと見当たりませんわ、まあ、またあとで見えますやろ」
「えっ?!なんでしたら、内藤さん、お呼びしましょか?!」
「いや、いや、かまへん、わざわざ呼びつけるほどでもないわ。それより、雪絵ちゃん、先生にお作りしたげてぇな」
「あっ、はい、すみません、失礼しますぅ」
 愛想よく頬笑んだ雪絵さんが、お代わりをこしらえてくれる間にも、なんだかソワソワし始めたような会長を見やった山猿であった。

(こりゃ、どうやら会長はん、ついにノッてきたらしいでぇ。)

 なにせ平然と生足を触りまくる人なのである、そんな人が酔ってはずすハメとは、いったいぜんたい、いかほどのものであろう。
とて、ますます期待も高まる一方ではないか・・。

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posted by 歴史小説家 菅靖匡 at 12:24 | Comment(0) | 実録 華も実もある北新地物語
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